ブックタイトル社会科NAVI Vol.15
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社会科NAVI Vol.15
現代社会ウォッチングvol.3外国からみる日本の政治ーアメリカからみる(その1)●筑波大学大学院教授辻中豊前回,中国の人々に,東日本大震災後にも買い占めなどのパニックを起こさず,気遣いや思いやりをもって絆を大切にした日本という社会の仕組みを自らの国にも導入したいという気持ちがあることを指摘しました。社会科学の用語では,地方ガバナンス,ソーシャルキャピタルというものがそれにあたり,広くは市民社会(人々の集団)と政治の繋がりの仕組みを指しています。ガバナンスやソーシャルキャピタルという言葉が社会科学の世界で流布し始めて,20年くらいたちます。ガバナンスは,いろいろな制度が担当することを前提とした機関,例えば地方自治では,市役所が,市に関係する人々の集団,団体,企業,NPO・NGO,自治会・町内会や普通の住民など多くの関係者と運営を協働していく仕組みや働きをさします。ソーシャルキャピタルを直訳し社会資本とすると,日本ではこれまで道路やダム,港湾,水道,公園,公営住宅,工業団地,学校などインフラとも呼ばれる社会基盤をさしてきたため,区別して社会(人間)関係資本と訳されます。ソーシャルキャピタルは,人々の繋がり方の働きを示す言葉で,人々のいろいろな集団への参加や活動(ネットワーク),それを通じてのお互いの関係,そこから生まれる人々の間の信頼,さらには組織や政府への信頼を示す言葉と考えられています。今回は日本の政治や社会の仕組みを,アメリカの政治や社会からみてみましょう。アメリカ大統領選挙の分析から2016年は大統領選挙の年でした。実業家のドナルド・トランプ氏が激戦の末,著名な政治家であるヒラリー・クリントン氏を破って大統領に選出▲アメリカ,ワシントンDCのファーマーズマーケットされたのは記憶に新しいですね。この選挙報道の中で,私が引っ掛かった言葉は,コミュニティという言葉でした。アメリカのコミュニティが崩壊した,コミュニティを復活させる,多様で寛容なコミュニティが重要だ,という言葉が,候補者の演説や支持者の声の中にあり,それが隠れた争点のように思われました。図1.アメリカの郡ごとの最大規模の投票者集団(2012年)白人/高卒以下白人/大学科目履修白人/大卒マイノリティ(出典:New York Times)図1は,なぜトランプ氏が勝利したかを分析する記事の中にあったものです。どのような人が多く住み投票する地域かを示しています。青い地域は高校卒以下の白人が多数,他方でクリーム色の地域では黒人やヒスパニック系などマイノリティが多数を占めることを表しています。さて,図2は,共和党のトランプ氏が勝った地域を赤で示したもので,先ほどの青い地域つまり白人高校卒以下の住民が多数の地域と重なることが分かります。アメリカの都市部以外では,このような白人層が多数であることが分かります。選挙での大きな政治的争点であった移民規制の12社会科NAVI 2017 vol.15