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概要

社会科NAVI Vol.15

?真庭バイオマス発電所全景な問題の一つがバイオマス利用度の低さである。林業先進国の多くは北米や欧州などの先進国だが,そうした地域では日本に比べて木質バイオマス利用が著しく進んでいる。用材として使い切れない部分をバイオマスとして価値づけしてお金に換えているわけだから,スタート時点で競争力に差がつくことになるのは当然である。真庭における取り組み岡山県真庭市は中国山地の山あいに位置し,昔から林業や製材業がさかんな地域で,現在でも市内に約30社の製材所がある。銘建工業株式会社も町の製材所として90年余り前に創業し,製材及び集成材製造事業,中大規模の木造建築事業,さらには製造過程で発生する大量の木くず等を利用した木質バイオマス事業を営んでいる。バイオマス事業の発端を端的に表現すると,「もったいない精神」ということになる。1960年代頃より木材乾燥用の燃料利用として始まり,1984(昭和59)年に175kwhと小規模ながら最初の木質バイオマス発電を開始した。1998(平成10)年にはさらに規模の大きい発電所(1,950kwh)を開設し,工場で発生する残材を余すことなく自家利用する仕組みづくりに努めてきた。当時はバイオマスという言葉も一般には馴染みがなく,地球温暖化問題への関心も高くない状況で,当社の取り組みは周囲から見ると費用対効果を度外視した行為に映ったようである。しかし,次第に時代が追いついてきて,木質バイオマスエネルギーの利活用が脚光を浴び始めることになる。国の制度もRPS法(新エネ等電気利用法)の施行(2003[平成15]年),固定価格買取制度(FIT)の施行(2012[平成24]年)と,再生可能資源由来の電力買取制度が整備されるようになり,当社も2003(平成15)年から電力販売をスタートさせることができるようになった。●真庭バイオマス発電一方真庭市も地域最大の資源である森林の活用は地域活性化の一丁目一番地と捉え,木造建築の振興や木質バイオマス利活用を促進している。特にバイオマス分野においては「バイオマスタウン」の認定を受け,市庁舎の冷暖房をバイオマスボイラーで賄うなど,積極的に主導している。2013(平成25)年,こうした官民のバイオマス意識の高さと経験の蓄積の延長線上に,真庭バイオマス発電株式会社が設立された。真庭バイオマス発電は,銘建工業,真庭市を含む地域の10団体の共同出資から成り,オール真庭の木質バイオマス発電事業といえる。銘建工業の発電所が工場内木質資源の最適利用を企図したのに対し,真庭バイオマス発電は地域の間伐材や未利用材,地域の製材所の残材をベースとした「地域木質資源の最大有効活用インフラ」として期待されている。この発電所は10,000kwhと木質バイオマス発電としては大規模なもので,2015(平成27)年4月から操業を開始した。年間10万トン以上の未利用木質資源を活用する波及効果,相乗効果は大きく,『山元へのお金の還元』,『林業・燃料チップ事業など発電の上流事業領域の活性化と雇用創出』,『産業廃棄物だった樹皮等の資源化による製材業への還元』,さらには『地域のバイオマスの取り組みを「バイオマスツアー」として観光資源化する取り組みへの寄与』など,期待されているインフラ機能を初年度から十二分に発揮している。官民一体となった地域資源有効活用の仕組みが地球環境改善と地域活性化に同時に寄与する,このような真庭モデルをさらに安定化させ,発展させていきたいと考えているところである。●問い合わせ先銘建工業株式会社本社総務部〒717-0013岡山県真庭市勝山1209TEL:0867-44-2693FAX:0867-44-5105E-mail:info@meikenkogyo.com社会科NAVI 2017 vol.15 17