ブックタイトル社会科NAVI Vol.16
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社会科NAVI Vol.16
中尾 敏朗(なかお としろう)専門分野/社会科教育,歴史教育主要著書/編著書に『歴史学習「観点別評価」ワーク』(明治図書,2014 年),『学力を伸ばす日本史授業デザイン―思考力・判断力・表現力の育て方』(明治図書,2011 年)など● 実際の授業ではどのような学習展開が想定されるのか,上図にある近世の例で見てみましょう。 「全国が統一されたから」で間違いではないのですが,もう一歩深めて,その内実が何であるのかをつかませる学習が考えられます。そのために,例えば主だった大名の石高比べをしてみましょう。特に,これを時間的な推移の中で見ると,関ヶ原合戦の前には豊臣,徳川,上杉,毛利など100 万石超の大名家が複数並び立っていたのが,関ヶ原後には徳川家の一極集中・寡頭体制に移ったことがつかめてきます。加賀110 万石の前田家を最大とする大名たちは,700 万石にもなる強大な徳川勢力に,もはや刃向かうことはしなくなったということが得心されることでしょう。 例えば,田沼意次の政治と松平定信の政治を比較する学習から始めましょう。ただし,その差異を論じるだけでなく,共通するねらいを考えるのです。それが,苦しかった幕府財政の回復だとつかめてきたら,次には,これを享保改革や天保改革,さらに幕末の藩政改革などにも当てはめて見てみましょう。これによって,武家による政治に一貫した課題と,そこで行われた施策の特徴を大きく捉えることができます。「江戸時代になるとなぜ大名どうしの戦いが行われなくなったのだろう?」「度々の幕府の政治改革は,共通して何を目指したのだろう?」 イの思考・判断・表現に関わる歴史的分野の目標は,次の文言で示されています。 「歴史に関わる事象の意味や意義,伝統と文化の特色などを,時期や年代,推移,比較,相互の関連や現在とのつながりに着目して多面的・多角的に考察したり,歴史に見られる課題を把握し複数の立場や意見などを踏まえて公正に選択・判断したりする力,思考・判断したことを説明したり,それらを基に議論したりする力を養う。」 これまでの目標の示し方に比べて,歴史に関わる何●を●,歴史ならではの何●に●着●目●して,歴史をど●の●よ●う●な●手●立●て●で考えるのかがはっきりと示されているのが特徴です。表現についても,説明する力と議論する力に分けて具体的に示されています。このように,歴史を考察する際の着目の視点や思考の方法=「歴史的な見方や考え方」を明らかにし,各学習場面でそれを意識して働かせ続けることで,思考・判断・表現の力を育てていこうとしているのです。 上述の知識の面とあわせると,時代の特色の把握に向けて焦点化された代表的な事象を選び出して適切な問いを設け,これを歴史的な見方や考え方を働かせて考察する学習が求められます。これによって,歴史は網羅的な暗記の対象でなく社会の営みを考える学びとなり,また考えることを通してその時代の状況がより深く理解でき,確かな知識として定着することになるのです。が確立したこと」を理解するために最も効果的だと考えられる選ばれた内容,という意味です。 平成20 年版学習指導要領でも,歴史的分野の旗印として「学習の構造化と焦点化」が説かれていました。今次の改訂ではそれをなお確実におし進めて,生徒たちが歴史の大きな流れをつかむための,選び抜かれた代表的な事象を取り上げて教材を形づくることが求められるのです。 例1例243時代の特色の把握に向けて焦点化された代表的な事象を考察する学習の事例「歴史的な見方・考え方」を働かせた考察や構想ーイ 思考・判断・表現の面ー社会科NAVI 2017 v ol.16 11