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概要

社会科NAVI Vol.16

 新学習指導要領では,いわゆる中項目ごとに「知識及び技能を身に付けること」として学習内容が示され,さらに「次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること」が示され,知識・技能と思考力を関連させることが明記されている。従来の学習指導要領では学習内容が示され,思考力は重要だとされながらも,目標で示されるだけで,具体的に内容と関わらせていたわけではない。したがって,思考力を意識しながら学習内容を教える,あるいは学習することがあまりなかった。新学習指導要領では,思考力の育成を意識させて,学習内容に取り組むことがもとめられている。 地理的な見方・考え方は,国際地理学連合(IGU)地理教育部会(CGE)が公表した地理教育国際憲章の地理学の5大概念に基づいている。すなわち,①位置(の規則性)・分布(パターン)(分布パターンとすることにより,空間的な傾向性,つまり一般的共通性を追究することになる),②場所(その場所の自然や人文的特性)(①との関連からみると,地方的特殊性の追究),③地人相関(自然と人間生活の関連性),④空間的相互依存作用(地域間の結びつき-貿易・交通),⑤地域(空間的に意義 中学校社会科の地理的分野の改訂のポイントは,大きくは2 つに整理される。第1は,思考力と知識・技能を明確に関連させたことである。これについては,社会科に限らず全教科で共通していることであるが,社会科地理的分野では,思考力を社会的な見方・考え方の中で,さらに地理的な見方・考え方としている。この地理的な見方・考え方と知識・技能を関連させた学習指導要領となっている。 第2は,学習時間短縮による内容の整理とESD,防災の重視である。新学習指導要領の地理的分野の配当時間は,現行の120 時間から5時間短縮された115 時間となっている。しかし,内容の量,質ともおとさないということから,現行では重複していたような内容を見直し,項目などを整理している。また,ESD(持続可能な社会),防災が強調されており,学習内容にも反映されていることである。ESD および防災は,中学校地理的分野のみならず,高等学校で必履修化される「地理総合」でも重視され,小学校,中学校,高等学校の地理的内容,地理的分野,地理総合で一貫された学習内容となり,ESD や防災が小学校から高等学校までの地理に期待されている役割であるということができる。 こうした2つの大きな改訂のポイントは,社会科の目標である見方・考え方を働かせた課題への追究,解決への活動,および国際社会に主体的に生きる望ましい人間像へとつながっていく。●筑波大学教授 井田 仁康新学習指導要領の改訂のポイント中学校社会科地理的分野編▲ 図1 地理的な見方・考え方と学習内容1 改訂の大きなポイントは? 2 地理的な見方・考え方と知識・技能地理的な見方・考え方観点(働かせ)位置・分布場所地人相関空間的相互依存作用地域地理的な見方・考え方位置・分布場所地人相関空間的相互依存作用地域観点の深化学習内容内 容地域構成世界の生活と環境世界地誌地域調査系統地理・地域区分日本地誌地域の在り方8 社会科NAVI 2017 v ol.16