ブックタイトル社会科NAVI Vol.17
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社会科NAVI Vol.17
このロシアの広大・人口過疎・減少と対照的なのがバングラデシュです。政策的に人口は抑制され始めたとはいえ,調査のため訪れた首都ダッカには文字通り人があふれていました。人口密度は日本の約3倍,ロシアの120倍以上です。この国のメディアへの評価は「部分的に自由な国」※2 で,ロシアよりずっと自由がある国と評価されています。 バングラデシュにはロシアと似ている点もあります。それは政治の腐敗ぶりです。TransparencyInternational(国際透明性)という国際NGO※3が公務員と政治家の腐敗度指数を毎年公表していますが,バングラデシュは100点満点の25点で139位,ロシアは29点で119位(2015年)でした。※4時として強権的な政治になるのですが,バングラデシュには常に複数の政党が存在し,競争的な選挙がほぼ定期的に行われ,2大政党による政権交代(アワミ連盟対民族主義党)も定着しています。繊維産業を中心に順調に経済成長が続き,新興経済国入りしつつあるとはいえ,貧困層が厚い途上国の一つです。ここには,地方自治がほとんどなく,大学教員なども含むほとんどの社会組織が2大政党に系列化されています。問題のありかは,政治と政府のガバナンス(国家と市民社会の諸アクターの関係)にありそうです。政府の非効率・腐敗,政党の動員や社会支配です。 バングラデシュのもう一つの大きな特徴は,ガバナンスの問題を補うように,市民社会の勢力が盛んなことです。世界的に見ても巨大なNGO(BRAC,グラミン銀行※5)が小規模信用貸し(マイクロクレジット)や大学経営,流通業など次々と社会革新の自治的方策を生み出しています。 いろいろな体制と国々を見てきましたが,すべての国々で共通の合言葉が囁かれています。それが社会革新の方策(social innovation)です。次回はこれについても触れてみましょう。▲ バングラデシュ,家電工場●辻中 豊(つじなか ゆたか)専門分野/政治学主要著書/『大震災に学ぶ社会科学 第1 巻 政治過程と政策』(東洋経済新報社,2016 年),『現代日本のNPO 政治―市民社会の新局面( 現代市民社会叢書)』(木鐸社,2012 年),『利益集団(現代政治学叢書)』(東京大学出版会,1988年),日本文教出版『中学社会』教科書著者※ 1.FREEDOMHOUSE の評価では,政治的な自由は最低(7 段階中最低の7),市民的な自由もほぼない(7 段階中低位の6)と毎年低下した。※ 2.政治的な自由は中位(7 段階中の4),市民的な自由も中位(7段階中の4),いずれも中位に停滞している。※ 3.ドイツ,ベルリンに本部事務局を置くNGO。1995 年から毎年, 「 世界の腐敗レポート」「世界腐敗バロメーター」「贈賄指数」を 発表している。腐敗認識指数は,調査対象国の内外のビジネスマンやアナリストに腐敗度認識を尋ね指数を算定している。Web:https://www.transparency.org/※ 4.ちなみに日本は75 点で18 位です。※ 5.Web:http://www.grameen-info.org/連邦主体ごとにバラバラであり,また70年余の社会主義・共産党一党制のために,市民の間の民主的規範や革新力は,国家権力に抑圧され脆弱に見えます。 バングラデシュ―人口の稠密さと 政治腐敗に対抗する社会革新社会科NAVI 2017 v ol.17 15