ブックタイトル社会科NAVI Vol.18
- ページ
- 15/20
このページは 社会科NAVI Vol.18 の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 社会科NAVI Vol.18 の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
社会科NAVI Vol.18
この小論では,政治発展の違いを系統立てて述べることはできませんが,日本を,単純に欧米諸国との比較でみる見方が「偏った」ものであることを自覚したいと思っています。そのため,中国,アメリカ,ロシア,バングラデシュと普通の日本政治比較とは異なる角度から,日本との比較を試みてきました。 最後に2つの図表を見てみましょう。 一つは,政治の担い手である政府で働いている人(広義の公務員)が雇用者全体に占める割合です(図1)。これは通常よくなされるOECD諸国との比較で日本をとらえる方式です。日本の公務員の割合がOECDで最少である,それも極めて著しいことが分かります。日本の公的セクターで働く人の割合が先進国最少である点はこの図を見れば自明なのですが,一般に,特にマスコミではそう捉えられていないことが多いのであえて引用しました。 もう一つは,広義の公務員の割合のデータがアジアでは入手しにくいため,政府支出のGDPに占める割合を示すグラフを示します(図2)。日本は,●辻中 豊(つじなか ゆたか)専門分野/政治学主要著書/『大震災に学ぶ社会科学 第1 巻 政治過程と政策』(東洋経済新報社,2016 年),『現代日本のNPO 政治―市民社会の新局面( 現代市民社会叢書)』(木鐸社,2012 年),『利益集団(現代政治学叢書)』(東京大学出版会,1988年),日本文教出版『中学社会』教科書著者日本政治をみる比較のフレームを変えるする境界線上にあると評価されています。日本と最初の平等条約(日墨修好通商条約1888年)を結んだとされるメキシコは,ラテンアメリカ諸国の中では日本との関係も深い国です。1821年に独立し,1929年から2000年まで制度的革命党の権威主義体制が続いたとされます。 トルコやメキシコはともに日本とよく似た社会的な雰囲気を感じさせるソーシャルキャピタルを有しながらも,その後の政治発展の歩みは複雑であり,日本との違いが目立ちます。OECD加盟国中では平均を下回りますが,ほぼ中位にあります。この図からわかるのは,アジア諸国では,日本よりずっと少ないことです。公務員の割合もアジアでは日本より少ないと推定できます。 この2つのグラフはそれぞれ興味深いのですが,今回の結論として述べたいことは,日本を,先進国の中だけでみても,またアジアの中だけでみても,それは一面的ですよ,という点です。 なぜ,日本の公務員(割合)が少ないのか,なぜアジアではもっと少ないのか,そして,なぜ日本では,こうした少ない公務員によって,効率的に効果的に政治行政,そして社会が運営されているのか,疑問は尽きないところです。またそれは,社会的なイノベーションや政治社会の仕組みや相互関係と大いに関係があります。次回はそれらを総括してみたいと思います。※ 1.日本政府とベトナム政府が合意して,2016 年秋にハノイで開学した日越大学の公共政策プログラム。http://vju.vnu.edu.vn/en/menu/academics/public-policy※ 2.両国の評価については,https://freedomhouse.org/report/freedom-world/freedom-world-2017を参照。403530252015105%1990 1995 2000 2005 2010 2014フィリピン ベトナム台湾 日本マレーシアインドネシア中国シンガポール韓国 タイ 図2.東・東南アジア諸国の政府支出のGDP に占める割合※出典:IMF302520151050ノルウェーデンマークスウェーデンフィンランドエストニアハンガリーフランスラトビアイスラエルスロバキアベルギーカナダOECD 平均ギリシャスロベニアイギリスチェコオーストリアスペインアメリカポルトガルアイルランドイタリアオランダトルコルクセンブルグドイツスイス韓国日本%図1.全雇用者に占める公務員(広義)の割合(2015 年) ※出典:OECD社会科NAVI 2018 v ol.18 15