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概要

社会科NAVI Vol.18

昔のような寒波は少なくなりました。やがて待ちに待った春が来ます。この時季のわくわく気分は北に住む者にしかわからないでしょう。仕事もやりやすいのですが,山菜採りやジンギスカンで乾杯!もこの頃から始まります。秋には農作物や海産物が旬を迎えます。作業所では安全大会と称した懇親会を年に数回開催し,業者間のコミュニケーションアップを図ります。なぜなら,型枠工事業は協同作業のため,意思疎通がとても大切になってくるからです。ですので,これも仕事に対する大事な作業の一つなのです。皆さんはコンクリートでできたビルや学校,病院,あるいは橋などを街のあらゆるところで見ていることと思います。元は砂利やセメント,水が混ざったドロドロのコンクリートが,なぜあの形をしているのか!なんてあまり考えることはないでしょう。私たちの仕事である「型枠工事業」とはそのコンクリートを設計図通りの形に成型する,文字通り「型枠」を造る仕事です。平面の設計図から立体になったときの姿を創造し,コンクリートを流し込んでも精度を保ち,なおかつ壊れない「かた」を造ります。流し込んで一定期間が過ぎると強力に固まりますので,「型枠」はすべて取り払ってしまいます。ですから「型枠」そのものを皆さんが見ることはありません。しかし,そこにできている構造物は紛れもなく私たち型枠大工が形づくったものなのです。いかに設計図通りに精度良く,しかも美しい構造体を造れるかが型枠職人としての腕の見せどころです。同じものを大量に造る製造業と違って,建設業は常にただ一つの製品を様々な職人が協力して造り上げます。何十年もこの仕事をしていても,同じ条件の建物など一つもないのです。その建築物をいかに安全に,そして正確に,なおかつ早く完成させるか工夫を重ね,そして事故なく精度良く美しい製品が完成した時,それまでの苦労も吹っ飛び,自信とやりがいにあふれます。しかもその製品はいつまでも残って,地域の人々に場を提供します。これが私たちの仕事なのです。北海道は積雪寒冷地のため,建物が丈夫にできています。特に基礎は地面の下1m 以上深く造らないと,凍結して家そのものが持ち上がって(凍とう上じょうといいます)しまうので,特に頑丈な造りになっています。ここが型枠工事の大切な,そして力の入る作業になってきます。寒さを防ぐには断熱材をしっかりと入れなくてはなりません。本州の人から見れば驚くほど断熱に力を入れています。およそ本州の1.5 倍の厚さがあ最近は,気候変動や大地震,火山の噴火など,自然災害が続いています。そうした災害の予防や起きてしまった災害への対応などに,建設業の機動力は大変重要になっています。私たちが安心して暮らすためには,地域にとって一定規模の建設業はなくてはならないものなのです。そして,ひとたび何かあればお役に立てることがある,それも私たち建設業で働く者の覚悟であり,誇りでもあります。北海道の四季ははっきりしています。建物の骨格を造る我々の仕事は常にアウトドア作業です。夏は気温30℃を超える日が何日もあります。ですが,例外なく夕方には涼しい風が吹いてきますので,炎天下の仕事でも対応ができます。冬は氷点下20℃以下という厳しい寒さですが,防寒具をフル装備にして頑張っています。 最近は地球温暖化の影響なのか,▲ JAおとふけの基礎工事▲ 親睦を深める安全大会Q 型枠工事とは?Q ただ一つの製品造りQ 北の建物は暖かい Q 地域と建設業Q 四季の中での作業AAA AAります。なぜならその性能によっては,エアコンや暖房のエネルギー費用が大きく変わってくるからです。しごと図 鑑奈良国立博物館の学芸員の仕事建設業の仕事~型枠工事業編~●株式会社帯建工業 代表取締役社長 國枝 恭二18 社会科NAVI 2018 v ol.18