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概要

社会科NAVI Vol.18

● 図1 社会科における道徳教育の指導一人ひとりの子どもの見方・考え方社会生活についての理解多角的な思考や理解地域社会に対する誇りと愛情の涵養我が国の国土と歴史に対する愛情の涵養公民としての資質・能力の基礎地域や我が国の歴史や伝統と文化集団や社会との関わりに関する内容学習活動・学習態度への配慮教師の態度や行動による感化道徳的内容 伝統と文化の尊重と我が国と郷土への愛 今回の改訂で道徳の指導方法について重要なことは,問題解決的な学習が取り入れられていることである。特定の価値観の押しつけ,主体性をもたず言われるままに行動するような指導は改訂の対極にあ 子どもが具体的な事例や自分の問題に正面から向き合う社会科の学習では,子どもの中に自然と道徳が生まれ,授業に表れる。そう思わせる授業に出会うことがある。 小学校6 年でイラク問題を扱ったK 教師は,暴言と暴力で荒れた教室で,逃げ出したい衝動を抑え込みながら,カルテをとり続けていた(川島,2008)。タケシは金髪。タケシは,学級の中で,暴力・恫喝で何事も解決する。相手が,返事をぐずっていると「お前調子に乗ってんなよ,殺すぞ,ぼけ。」と威嚇している。一方,T 教師が,学級活動の時に「タケシくん,しんどいことないか?」と聞くと「あんな,おれも寂しい思いをしているけどAの方がもっと寂しい思いをしているで。」と発言したことが報告されている。 「様々な争いを解決していくためには,戦争以外に方法はないか?」という授業で,ガンジーが取り上げられ,「ガンジーのように無駄な抵抗はやめた方がいい。」という発言に対して,タケシは「やり返すで,ふつう。」(36 たけし),「ガンジーは強いけど,俺たちとは違うねん。」(38 たけし)と発言する。授業に参加し始め,本音がでてきた箇所である。話し合いに関係ない会話が続き,T 教師が「平和にできると思う?」と話題を戻すと,タケシは「できひんと思う。」と言い切る。「このクラスでも少しでも差別をなくしたい。」●東海学園大学・名古屋大学名誉教授 的場 正美道徳教育と社会科の授業「このクラスで,差別ってどんなこと?」「仲間はずれ」と発言が続いたあと,そのタケシが,「例えば,なんか持っていないと仲間はずれにされる。」と自分の体験を述べる。差別をしない心をもつためにどうしたらよいのかという話題に移り「そいつの気持ちを考えて,そいつに合うなぁ。なんかさぁ。(考え込む)人格?」と発言している。仲間になりたくてもなれない葛藤と相手と仲良くなりたい心と恫喝の行動との矛盾の中で,差別に自分の体験を重ね,相手の気持ちにたって考え始めている。12社会科の授業で生まれる道徳新学習指導要領の社会科と道徳4 社会科NAVI 2018 v ol.18