ブックタイトル社会科NAVI Vol.18
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社会科NAVI Vol.18
的場 正美(まとば まさみ)専門分野/教育方法,授業研究主要著書/『授業分析の方法と課題』(黎明書房),『授業研究と授業の創造』(渓水社),『社会科の新しい使命 ?『小学社会』のめざすもの?』(日本文教出版),『Lesson Study: International Perspectiveon Policy and Practice』(EducationalScience Publishing House)日本文教出版『小学社会』教科書著者● 社会科が創設された時期は,社会科は道徳と深い関係があった。道徳が一つの領域として特設され,教科化されていく過程で,道徳の位置や扱いをめぐる論争がなされた。その歴史を忘却の彼方におくことなく,また,その呪縛に縛られることなく,社会科の授業を実践する者は道徳の問題と向き合う必要がある。 問題解決を実践する教師は,教材の内容の研究だけでなく,その教師の授業の見方・考え方を背景にした,次のような授業方法あるいは授業方針をもった教師である。 ・一人ひとりの子どもにおいて違いのある多様なその子の感性や思いや捉え方を特定の価値や目標に当てはめることが如何に非人間的かということを思想としてもっている教師である。 ・一人ひとりの子どもの学びを重視しながらも,その子の学びは他の子どもの反論や意見,異なった見方や価値観の交流の中でこそもまれ,一人で困難にこたえてその子なりに子どもは自己を突き詰めていき,自分を形成していくという考えをもっている教師である。 ・子どもの建前論に白々さを感じ,それを超えてその子の日常の学習や生活の態度を反映した本音が出ることを願っている教師である。建前は許さないという態度,本音を出しやすい学級と授業を目指している教師である。 ・人々の工夫や苦労や願いが含まれる具体的事実を重視する教師である。日本文教出版の『小学社会』では,そのような具体的事実が事例として挙げてある。かつて,上田薫は,抽象と具体について存在と当為の視点から「具体的にあるとは,なんらかの状態に達せんと努力しつつあることにほかならないからである。」(上田,166)と述べたことがある。具体の中には人々の「こうありたい」「こうしたい」という願いや当為が含まれ,現在のあり方を変化させ,具現化していく。 ・子どもがもっている感動・感情・情操を大事にしつつ,感動的な先人の働きや創作の世界を現実の生活に強引に引き込まない教師である。 ・世界,日本,地域社会,学校,同僚,子ども,保護者,社会科,そして自分に責任をもつ教師である。責任を自覚し,問題解決を目指す教師の実践では,人々の願いや自分の生き方に関する発言が滲み出る。 ・授業研究を通して,自己を研鑽する教師である。社会科の道徳的側面が授業で滲み出ている状態や滲み出る可能性を教師が自覚し,より深い子どもの内面に影響を与える授業を創造するためには,授業研究が必要である。(参考文献)上田薫(1958)『知られざる教育』黎明書房川島稔彦(2008)「荒れる子どもを生かす授業を求めて」社会科の初志をつらぬく会『生き方が育つ教育へ』黎明書房山崎雄介(2013)「『教科化』は道徳教育を改善するか」『群馬大学教育学部紀要?人文・社会科学編』64, pp.157-171ると解説では述べ,「発達の段階に応じ,答えが一つではない道徳的な課題を一人ひとりの児童が自分自身の問題と捉え,向き合う『考える道徳』,『議論する道徳』へと転換を図る」ことが強調されている。 社会科と道徳の関係は図1 のように表すことができる。外側は,教室や授業での子どもの学習態度への配慮と教師の態度や行動による感化である。社会科で扱う地域や我が国の歴史,伝統,文化を理解することを通して,地域社会や我が国の国土と歴史に対する愛情が涵養され,それが道徳につながるとされている。 日本文教出版の『小学社会』は,社会的な見方や考え方をそれぞれの子どもが社会的事象を捉えるメガネとして考え,その深まりを三つの層で捉えている。相互に浸透する第三の層<公共>の層で道徳が個性的にあらわれる。図の背景に,個々の子どもの見方・考え方を置いた。3道徳教育の呪縛を超えた社会科の授業実践の条件社会科NAVI 2018 v ol.18 5