ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

社会科NAVI Vol.19

 社会科のテストでよくある穴埋め問題。たとえば「徳川家康と石田三成は(  )で戦った」という問題の答えは何だろう。出題者は,「関ヶ原」という答えを期待したと思うが,「必死」と答えた子がいたと有田和正氏が紹介していた。この子の答えをどう評価するだろうか。不正解だろうか。 では,「日本国憲法前文」で穴埋め問題をつくる場合,どこを穴埋めにするだろうか。「主権が国民に存する」の「主権」や「国民」,「恒久の平和を念願し」の「平和」など憲法の基本原則に関わる部分を穴埋めにするパターンが多いようだ。一方,「これに反する一切の憲法,法令及び詔勅を排除する」の「排除する」や,前文結びの「この崇高な理想と目的を達成することを誓う」の「誓う」という部分を穴埋めにするパターンはきわめて少ないようだ。この場合は,憲法条文の動詞,つまりどう行動するかを表現している部分を問うている。社会科で憲法前文の穴埋め問題を解いた経験がある国民は多くても,それを「誓った」という自覚を持つ人は多くないと言えるかもしれない。私は,穴埋め問題を推奨しているわけではないが,問題をつくるとき,動詞の部分を大事にしてみてはどうかと思う。一言一句を暗記するのではなく,自身が誓う(決める)ことに気付かせたいからだ。その場合,同義語でもよい寛容さがあるとよいだろう。「誓う」の場合は,「決めた」や「大切にする」などの答えがあるかもしれない。そこから,「むかしの人はなぜ誓ったのだろう」など歴史につながる新しい疑問も生まれるだろう。冒頭の「必死」と答えた子にも「なぜ必死で戦ったのか」とつなげると学びも深まることだろう。自分は社会でどのように「行動する」かを考える時間としての社会科が大切だと考えている。動詞が大切?!愛知教育大学教授 土屋 武志リレーエッセイ土屋 武志(つちや たけし)専門分野/社会科歴史教育主要著書/『解釈型歴史学習のすすめ―対話を重視した社会科歴史』(梓出版社,2011)『アジア共通歴史学習の可能性-解釈型歴史学習の史的研究』(梓出版社,2013)『実践から学ぶ解釈型歴史学習-子どもが考える歴史学習へのアプローチ』(編著,梓出版社,2015)日本文教出版『小学社会』教科書著者社会科NAVI 2018 v ol.19 3