ブックタイトル社会科NAVI Vol.19
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社会科NAVI Vol.19
寺嶋 浩介(てらしま こうすけ)関西大学大学院総合情報学研究科を修了後,京都外国語大学国際言語平和研究所にて研究員として約2 年間勤務。 その後,約10 年間の長崎大学教育学部での勤務を経て,2015 年1 月より現職。専門分野は教師教育学(特に教育工学,メディア教育)。テーマとしては,問題解決能力,コミュニケーション能力等の育成に興味がある。日本教育メディア学会,日本教育工学会,日本教育工学協会理事。主な著書に『教育工学アプローチによる教師教育』(ミネルヴァ書房,共編著),『タブレット端末で実現する協働的な学び』(フォーラム・A,共編著)がある。2009 年日本教育工学会研究奨励賞受賞。● 今後「主体的・対話的で深い学び」やその手段としてのICT 活用がより推進される中で,社会科の学習において,授業をどのように進めることが期待されるのか。まず,これまでの授業の展開方法を基本として考えて良いので,学習指導要領で目指されるような,社会的事象について多面的・多角的に児童・生徒が考えられるような場を設けたい。その際には,デジタル教科書,あるいはなければ普通の教科書紙面を実物投影機などの提示装置を用いて,資料を映し出すことが有効である。ただ資料を提示して伝えるのではなく,その背景となる状況や理由を考えさせるような組み立てにしたい。最近「答えが総て書かれている」として,特に社会科授業において,教師が教科書活用に消極的な場面が見られる。教科書を教えることをゴールにするのではなく,教科書で教えることをスタートラインとしなければ,児童・生徒は深く学べない。教科書は,そのための知識の宝庫であり,積極的に活用しない手はない。各社教科書の比較読みをしてみることも授業づくりにおいては役立てられる。また,活用にあたっては,指導書があればそれも参考にしたい。これには,ひとりの教師ではなかなか思いつかない学校現場の知識がふんだんに込められている。デジタル教科書が今後より積極的に導入されるようになっても,活用する側の教師にこの「基礎体力」がなければ,費用対効果は見込めないのではないかと私は考えている。 また,毎時間ではなく,特定単元の終わりなどに,児童・生徒がある問題について調べたこと,学んだことをまとめたり,表現したりしていくような場を少しずつ取り入れたい。例えば,小学校においては新聞づくりなどを行っているところもあるし,中学校においてもポスターとして表現していくなどの,表現ベースの課題に基づいた授業をよく見る。児童・生徒用のICT 環境があれば,表現の手段をより拡げることができる。 こうした取り組みを少しずつ進めるのは,ともすれば,次の学習指導要領への対応にしか見えないかもしれない。しかし,現実の状況は私たちが予想しない速さで進んでいる。例えば,大学入試改革により,理念上で言われていた「今後求められる力」が,よりいっそう明確化してくる。ICT環境が進み,児童・生徒1 人1 台が現実化しつつある。それを視野に入れ,デジタル教科書に関する法整備が進み,児童・生徒用の教科書に準拠したデジタル教材が,利用されるコンテンツとして積極的に導入される可能性がある。教育の形が大きく変わる中で,自ら考え,少しずつ考え方をシフトしなければ,さらに先は教師は不要な職業となるかもしれない。今後の授業の形を考えながら,教師として,教育の将来を切り開こう。2今後に向けて,社会科において期待されることで位置づき,情報の整理や発信に役立てることができる。ときに思考のための道具として,ときに協働学習としての活用にその可能性が見出されている。 しかし,こうしたことは,児童・生徒用のひとり1台の端末が常に使えるようになって実現していくものである。現状,多くの地域では,学校のICT環境をなかなか充実させることができないという悩みがあり,理想とは遠い状況にあるのが一般的である。とはいえ,大型の提示装置や指導者用のデジタル教科書が導入されるなど,教師の指導を充実させるための環境については,少しは進んできた。例えば,電子黒板やデジタルディスプレイでデジタル教科書の画面の拡大提示や,ペンで印をつけて注目させることで教師の説明の効率化を図ったり,知識を容易に習得できるようにしたりしていくことは有効である。これは,児童・生徒の学習を変えるよりも手がつけやすいので,まずは「わかる授業」の精度をより高くし,子どもたちが思考・判断・表現できる時間を確保することからはじめてみたい。社会科NAVI 2018 v ol.19 5