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概要

社会科NAVI Vol.19

▲ 東北大学災害科学国際研究所  鹿妻復興マップづくり 活動のまとめ(2013 年度)▲ 石巻市立鹿妻小学校 復興・防災マップ  発表会(2018 年3 月8 日)? 東北大学災害科学国際研究所監修  「復興・防災マップづくり」実践の手引き ( 2017 年)村山 良之(むらやま よしゆき)専門分野/地理学,防災教育主要著書/『防災教育の展開』(共著,東信堂,2011 年),『災害-その時学校は 事例から学ぶこれからの学校防災』(共著,ぎょうせい,2013 年),『防災・減災につなげるハザードマップの活かし方』(共著,岩波書店,2015 年)日本文教出版『中学社会』教科書著者● 石巻市教育委員会では,復興・防災マップづくりの全市展開に取り組んでおり,2017 年度は第1回マップコンクールも開催された。応募されたマップは,それぞれの学区の地理的条件にあわせて多様であり,水害を対象とするものもたくさんあった。筆者も審査員をさせていただいた。 小学校の取組は,鹿妻小がひとつのモデルになり得ると考えられるが,中学校での取組が大きな課題となっている。2017 年度これに挑戦した桃ものう生中学校では,社会科担当の先生が地理の授業として地図の学習2時間分をマップづくり(総合)に挿入するという重要な展開があった。2016 年度に筆者を含む大学関係者がまとめた『「復興・防災マップづくり」実践の手引き』の改訂にあたって,桃生中の実践を参考に社会科地理との連携を例示することになった。地理,歴史,公民あるいは理科,保健体育,道徳等との連携を視野に入れたカリキュラムマネジメントの観点は,中学生らしいマップづくりを進めるための大きなヒントになると期待される。桃生中学校でのマップづくりいこと,2016 年11 月22日の朝に発生した福島県沖の地震による津波注意報,警報に対する避難行動に課題が多いことを学校が子どもへの独自の調査によって把握したからである。マップには,まちあるきやインタビューで得られた情報だけでなく,東日本大震災の浸水域や子ども一人ひとりの避難ルートが書き込まれた。さらに,各自が防災俳句(標語),そのポスターと解説文をつくることで,子どもたちに防災意識が定着するよう工夫された取組となった。これらは,大学からの支援をごく一部受けつつも,4学年の担任と校長,教頭先生らが独自に工夫されたものである。インタビューされた地域の方々や保護者が招待された発表会には,3年生も参加して来年度につなぐとのことである。またその発表会で,あるお母さんは津波避難の生々しい経験を子どもたちにお話しされた。肯定的なポイント探しを誘導した当初の復興マップづくりから,大震災を学んで自らの防災に役立てる取組に大きく変化したことは,わずか数年ではあるが隔世の感がある。社会科NAVI 2018 v ol.19 7