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概要

社会科NAVI Vol.20

現代社会ウォッチングvol.7●東海大学教授 筑波大学名誉教授 辻中 豊 今年2018年は明治維新から150年目の記念の年ですが,日本人は,明治に始まる近代化の過程で,常に欧米諸国を見て,自分たちの国や社会の物差しにしてきました。現在でも,知らず知らずのうちに比較参照する相手は欧米先進国に偏っています。しかし,21世紀の日本の針路を考えるうえで十分でないように思います。人口では,現在14億人を超える中国をはじめ,21世紀中ごろには16億人を超えて世界一の人口大国となるインドや,インドネシア,パキスタン,バングラデシュが2億人以上の人口をかかえるようになります。 世界経済の重心も欧米から大きくアジアに移動します。中国が2014年に打ち出した「一帯一路」構想(アジアとヨーロッパを結ぶ陸と海の新しいシルクロード計画)は,2015年末に発足したAIIB(アジアインフラ投資銀行)とともに,中国が主導 世界中を調査していて感じるのは,こうした大国間の喧騒とは別に,人々の願いの共通性です。どの国の人々も政治も,人々の生活の「よきありかた」(wellbeing)を保証するしくみを懸命に模索しているということです。かつて欧米が示すことができたしくみのモデルが十分ではなくなっているのです。アメリカの自由主義(経済・貿易),ヨーロッパの福祉国家は,いずれも20世紀の世界に強いインパクトを与えましたが,現在ではかつての魅力は色褪せています。 それに代わって世界中で,社会のしくみの革新や新機軸を意味する,さまざまなソーシャルイノベーションが唱えられています。これは,ヨーロッパとアジアで特に注目されており,社会的課題やニーズに対して,既存の解決策より効果的に対応できる新たなサービス・取組み・手法等を提案するものです。例えば,最近日本でも注目されているシェアリングエコノミーは,中国や東南アジアでの進展振りには目を見張るものがあります。シェアバイクやシェアライドがわかりやすい例ですが,空間,もの,スキル,お金とあらゆるものを割安でシェアし効率的に提供し決済するサービスがICT(情報通信技術)の発展で急速に普及しています。日本ではまだ部分的 これまで連載では,アメリカのような日本に馴染みのある国から,近くて遠い隣国,中国やロシア,そしてアジアの親日国のバングラデシュ,ベトナムと,これまでの日本との比較されることの少ない,そしてずいぶん日本とは常識の異なる国々について見てきました。▲ アシガバードの官庁街▲ 中国の一帯一路構想(陸と海のシルクロード)アジアに重心のある新しい世界生活の「よきありかた」を目指す政治外国からみる日本の政治する経済発展を強力に進めているようにも見えます。イギリスがEUから離脱し,トランプ大統領がアメリカ第一主義を唱え,グローバリズムに背を向けるように見えるとの対照的です。世界は,これまでとは別の秩序へ向かっているのでしょう。18 社会科NAVI 2018 v ol.20