ブックタイトル社会科NAVI Vol.20
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社会科NAVI Vol.20
永田 忠道(ながた ただみち)専門分野/教科教育学(社会科・生活科)主要著書/『地域からの社会科の探究』(日本文教出版),『新社会科授業づくりハンドブック』(明治図書)/『平成29年版小学校新学習指導要領の展開社会編』(明治図書)/『平成29年改訂小学校教育課程実践講座生活』(ぎょうせい)日本文教出版『小学社会』教科書著作者● 新たに学習指導要領や解説で例示された公式見解としての社会的な見方・考え方は,これまでも社会科に熱心に取り組んできた先生方にとっては,従前の社会科授業を大きく抜本的に変えることを求めているものではないことをお分かりいただけることと考える。第3学年の地域の販売の仕事についても,消費者側の視点だけでなく,販売者側の視点とともに,さらに経済的な概念にも可能な範囲で子どもたちを導こうとされてきた先生方はこれまでも多く,そのような実践はもちろんのこととして,公式見解で求められる社会的な見方・考え方を超えるような視点を働かせた社会科授業も数多く蓄積されてきている。 例えば,2015年10月に全国小学校社会科研究協議会の広島大会で公開された広島市立古田台小学校(廣藤誠校長)の実践「わたしたちのくらしと商店の仕事-スーパーって,やっぱりスーパー(超)だ!-」(高柿成美教諭)は,全17時間の説においては,この三つの視点での考察が進むときには,地域の販売の仕事を対象とする社会的な見方・考え方が効果的に働かせることができる可能性が高くなると示唆していることになる。 子どもたちにとっては,消費者側の視点が当事者目線となることに対して,販売者側の視点はほとんどの場合,他者意識の中での考察となる。自らの経験上でも見えやすい消費者側の立場を起点として,販売者側の営業戦略との関係性に少しずつ気付きを深めながら,身近な地域の販売の仕事であっても,それは幅広い流通や商圏と言った経済的な概念のもとでの営みであることが,小学校の中学年なりに,より可視化できるようになることが目指される。 このように考えると,学習指導要領や解説で例示されている社会的な見方・考え方は,先生方にとっては単元や授業を構成する際の,子どもたちにとっては学習成果や到達度のそれぞれの指標としての大きな役割を果たす存在にもなり得るというとらえ方もできる。単元の中で,新学習指導要領と解説で例示された社会的な見方・考え方の三つの視点もしっかりと押さえながら,単元の終盤にはスーパーマーケットの商圏に関わりながら,実は新興住宅団地である自分たちの地域には,なぜスーパーマーケットがないのか,これから地域にスーパーマーケットをつくるとしたら,どうするかの検討が展開された。 本単元では①消費者側のニーズの視点,②販売者側の営業戦略の視点,③流通と商圏の視点に加えて,もう一つの見方・考え方としての「地域と店舗の開発」の視点までを働かせようとする授業が進められたことになる。実際の授業の中では,それまでの学習の成果に即した店舗開発の様々な構想とともに,一方ではこの地域に新たな店舗を開発することへの危惧も子どもたちからは示されて単元は終えられることになった。この単元では,地域の販売の仕事の学習を通して,子どもたちは自分たちの生活する地域のあり方についても探究を始めたことになる。 いま,あらためて見方・考え方とは何かを,新学習指導要領や解説に例示された公式見解だけでなく,感覚やこれまでの優れた実践と照らし合わせて考えてみると,それは必ずしも新規の特別なことではなく,社会科に関わってきた先生方ならば,自然と身についている力を再確認できる指標であり,子どもたちにとっては深い学びへとむかうための大事な指針になり得ることが分かる。その上で,どこまでの見方・考え方が働かせられているかどうかが,今後は先生方にとっても子どもたちにとっても,評価の重要な要素にもなっていくと考えられる。3例示を超える見方・考え方も視野に社会科NAVI 2018 v ol.20 5