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概要

社会科NAVI Vol.21

授業力アップをめざす先生のための小学校編●國學院大學教授 安野 功主体的な問題解決~子どもたちの「素朴な問い」を大切にしよう~ 問題解決的な学習の充実をはかる第1のステップは,社会的事象から学習問題を見つけだす学習に力を入れることです。すべての子どもが参加できるように教師が様々な指導の手立てを工夫するのです。ここではす・べ・て・の・子・ど・も・の・参加を目指すことが何より大切です。 こうした学習が実際に展開できているのか否かを見定めるバロメーターとして私がおすすめしているのは,すべての子どものノートに目を通すことです。 子ども一人一人が,ノートにその子らしい驚きや疑問(「!」や「?」),そこから生まれる「素朴な問い」をメモしていればOKです。逆に板書された学習問題だけしか書かれていなければ,学習問題を見つけだす学習活動が,一部の子どもと教師との間で進められていた疑いがあります。 もし,そうであるならば,問題づくりに深く関与していた子どもは主体的に学んでいたはずですが,他の子どもたちは学習のスタート時点から受け身の形で学んでいたおそれがあります。子ども主体の学習とは程遠いのです。 こういったことを回避するためにも,これからの問題解決的な学習においては,すべての子どもが抱く「素朴な問い」を大切にしていくことが強く求められます。 では,学習問題を見つけだす学習のなかで,どのような配慮や指導の手立てが必要となるのでしょうか。 ポイントは三つあります。 一つ目が,「子どもを知る」ことです。それはなぜかと言えば,子ども一人一人が学びの主役だからです。 具体的には,子どもがどこでどのような生活経験を積んでいるのか,どんな「もの,人,こと」に関心を向けて興味を抱いているのかなど,社会科学習の基盤となる子どもを取り巻く生活経験やものの見方や考え方などを探っていきます。その方法としては,休み時間や給食,清掃指導など学級生活の様々な場面において子どもたちと対話したり,学区内を探索したりすることなどが考えられます。 二つ目が,「教材と子どもとの距離を縮める」ことです。 教材の選定にあたっては,単元や本時の目標が実現できるか否かを吟味することが,まず必要です。その一方で,教材に子どもが食いついてくるかなど,子どもの側に立った学習活動の予測が必要不可欠です。教師の思惑どおりに子どもが反応することのほうが,稀だからです。また,ここで必要となるのが教材と子どもとの心理的な距離を縮めることです。子どもの生活実態や経験知,興味・関心などとの関連をはかりながら,教師が提示したい教材へと子どもを誘いこむのです。 三つ目が,「自分の言葉で表す場や機会を設ける」ことです。教材(資料)の提示後に,すべての子どもが「おや,気になる」「不思議だ!」「どうなっているのか?」など素朴な問いを自由につぶやいたり,ノートにメモしたりする場や機会を意図的に設けるのです。「子どもを知る」,「教材との距離を縮める」,「自分の言葉で表す」の三つで「素朴な問い」を引き出そう!10 社会科NAVI 2019 v ol.21