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概要

社会科NAVI Vol.21

ワールドシネマみんぱくvol.21「ママのお客」●大阪大学 教授 藤元 優子イランはイスラーム原理主義だのテロ支援国家だのとレッテル付けされ,政治の世界では危険なイメージがつきまとう。その一方,映画の世界では芸術性の高い優れた作品を輩出することで知られている。日本でもキアロスタミーやマフマルバーフ,パナーヒー,そして最近では「別離」や「セールスマン」などの作品が各国の映画祭で立て続けに受賞したファルハーディーなどの監督が有名である。彼らの作品は,イラン人が鋭い文化的感受性と自由で豊かな表現力を備えた国民であることを世界に示して,イランへの偏見打破の一助となってきた。 「ママのお客」を制作・監督したダーリウシュ・メヘルジュイは,1960 年代からイラン映画界を牽引してきた実力者である。重厚な作風の社会派監督として知られているが,本作では人気児童文学作家フーシャング・モラー2004 年 イラン映画 108 分監督/ダーリウシュ・メヘルジュイディー=ケルマーニーの同名の原作を基に,大都会の片隅で生きる貧しい人々の悲喜こもごもの日常をユーモアたっぷりに描いてみせている。映人を結ぶ「タアーロフ」画のタイトルバックで,カメラはテヘラン北部に聳える高層ビルから,次第に南部の下町へと移っていく。古びた民家が建て込んだ一角に,主人公のエッファトが夫と子供二人の四人で暮らしている。彼らは,中庭の水槽を囲んでいくつも部屋が並ぶ昔ながらの古家を他の賃借人たちとシェアしている。エッファトは,甥夫婦が結婚の挨拶に来ると連絡を受けて困惑する。歓待してやりたいのはやまやまだが,夫の給料が何ヶ月も未払いで,自分たちの食料すら底をつく有様なのだ。そこで,ご近所さんたちも巻き込んでのおもてなし作戦が始まる。皆の暮らし向きは似たり寄ったりなので,最初はろくな接待ができそうに思われないが,それぞれに知恵を働かせて食料をかき集め,一緒に準備に励んイランのイメージとイラン映画▲ みんぱくワールドシネマ チラシ提供:福岡市総合図書館14 社会科NAVI 2019 v ol.21