ブックタイトル社会科NAVI Vol.21
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社会科NAVI Vol.21
現代社会ウォッチングvol.8●同志社大学教授 松本 哲治 そもそも,憲法が変わるときとはどういうときであろうか。まず最初に思いつくのが,憲法改正(日本国憲法96条)により条文そのものが変わる場合である。 このほかにも,憲法典が改正による変更を受けなくても,その意味するところが変わることがある。そのような場合の一つとして,最高裁判所の判例の変更がある。最高裁判所の判決(決定の場合もある)は,後の最高裁判所にとって判例となる。最高裁判所は,通常は裁判官5名の小法廷で審理しているが,15名の大法廷で判断すれば,過去の自らの判例を変更できる。 なお,憲法が変わるという話に関して,最近,内閣の憲法解釈が変更できるかということが話題になった。これについては,集団的自衛権の概念や日本国憲法第9条の解釈,政府に対する拘束を緩める方向での解釈に際しての政治的な説明責任,内閣法制局の位置づけやその長官人事のあり方など,種々の論点が複合しているため,ここでは深く立ち入らない。ただ,最上級審にして終審たる最高裁判所の憲法解釈が変更できるということを前提にするとき,内閣の憲法解釈は変更できないという主張には,相当に説得的な説明が必要であろう(変更後の解釈が正しくないという主張はともかくとして)。 ところが,判例変更がないのに,憲法解釈の結論が変更される場合がある。その典型は,婚外子の法定相続分についての民法の規定に関する事例である。以前の民法の規定では,婚外子の法定相続分は婚内子の半分で,平成7年に大法廷の合憲決定があった。しかし,平成25年の最高裁の大法廷決定では,この判例を変更せずに,その民法の規定を違憲としたのである。その理由は,「我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化」などの様々な事情を「総合的に考察すれば」「父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」ということであった。 実は,最高裁が相続分に関する決定の中で「総合的に考察」している事情の中にあげられている最高裁自身の判決が,ここでの論理を先取りしていた。それは,国籍法旧3条1項の事例で,そ 最近の最高裁判所の重要な判決の中には,判例の変更をせずに,かつて合憲とした法律の規定について違憲とするものがある。これはどう受け止めるべきことだろうか。そして,今後も同じことがありうるのであろうか。▲ 最高裁判所大法廷▲ 婚外子の相続 憲法が変わるとき憲法改正・判例変更 判例を変更しない憲法解釈の結論の変更●父の遺産が1億2000万円の場合6000万円死亡結婚未婚0 円2000万円2000万円2000万円母父母婚内子婚内子婚外子大法廷決定旧規定の 2400万円 2400万円法定相続分婚内子の半分1200万円「憲法」が「変わる」とき?判例変更のない憲法解釈の結論の変更?16 社会科NAVI 2019 v ol.21