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概要

社会科NAVI Vol.21

 京都市中と郊外を題材にした絵画を屏風に仕立てた洛中洛外図屏風は,戦国時代から江戸時代に制作され,現在120 点ほどが確認できるという。その中で,織田信長が上杉謙信に贈り,米沢藩主上杉家に伝来したものを上杉本と冠している。 これは戦国時代から安土・桃山時代を代表する絵師狩か野のう永えい徳とくの作であり,理想化された室町幕府の京都支配を描いたとされるが,人々の姿などは典型的に描かれ,16世紀半ば,戦国時代の京都の様相を明らかにしている。上杉本洛中洛外図屏風とは 上杉本には約2500 人に及ぶ人々が描かれ,子どもたちの姿もそこかしこに見える。 連れ立って歩く親子,子どもをおんぶや抱っこ,肩車した親子連れが散見される。当時のありふれた風景であったと考えられている。通りを歩き,寺社を詣で,祇園祭の山車や念仏踊り,相撲,そ描かれた子どもたち▲ ?左隻3・4 扇 裏庭の羽根突き(米沢市上杉博物館蔵)? ?左隻2扇 「松永弾正(久秀)」邸前の左義長   およびその下部の子ども(米沢市上杉博物館蔵)▼ ?左隻2扇 毬杖(米沢市上杉博物館蔵)して猿回しや人形遣いなど見物に興じている。 室町幕府の有力者松まつ永なが久ひさ秀ひで邸の前に準備された正月行事の左さ義ぎ長ちょうの傍らに,手を広げて見上げる素振りの子どもがいる(?)。その大きさに驚きの声を上げているのだろうか。無邪気さが表現されている。祭りや芸能,行事は子どもの楽しみであった。 町屋の裏庭では,羽根突きをする子どもが見える(?)。今は女の子の遊びだが,中世では老若男女が楽しんでいた。また,裏庭は共同の井戸や便所がある日常生活の場であった。毬ぎっ杖ちょうも描かれている(?)。二手に分かれ,紐を付けた木の板で木製の球を打ち合う遊びである。遊びの風景は軽やかさと躍動感にあふれ,元気を表しているようだ。社会科NAVI 2019 v ol.21 21