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概要

社会科NAVI Vol.21

時代の変化と子ども●阿部 哲人(あべ てつと) 専門分野/日本中世史 「上杉本洛中洛外図屏風―景観・制作を めぐって」(『日本歴史』700 号,2006 年)。 特別展「洛中洛外図屏風―くらし―」 (2003 年),開館10 周年記念特別展「洛 中洛外図屏風に描かれた世界」(2011 年) などを担当。▲ ?左隻2 扇 釣り・シジミ採り(米沢市上杉博物館蔵)▲ ?左隻3 扇 子守り(米沢市上杉博物館蔵) 油小路の小川では釣りをしている子どもたちがいる(?)。一見遊びのようにも見えるが,食糧調達であったかもしれない。するとこれは仕事であった。小川にはザルを手にした父子も見える。シジミ採りと見え,父親と手伝う子どもの姿であろう。 中世の子どもの仕事は手伝いであり,遊び半分といった感覚であったといわれる。▲ ?右隻5 扇 妙顕寺(米沢市上杉博物館蔵) 上杉本が描かれた戦国時代は,中世から近世へと社会が移り変わっていく時代であった。 妙顕寺には老婆を先導するような子どもの姿が見える(?)。中世では,絵画史料から老人の世話・介護は子どもの仕事であったとされる。しかし,子守りをする子どもが描かれ始めるのは戦国時代であり,上杉本はその一つといわれる(?)。この時代に子守りが子どもの仕事になった現れとされる。 上杉本は,子どもにも訪れた時代の変化も明確に描き留めているのである。参考;黒田日出男『絵巻 子どもの登場 中世社会の子ども像』   (河出書房新社,1989 年)   田端泰子・細川涼一『日本の中世4 女人,老人,子ども』   (中央公論新社,2002 年)   斉藤研一『子どもの中世史』(吉川弘文館,2003 年)22 社会科NAVI 2019 v ol.21