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概要

社会科NAVI Vol.21

リレーエッセイ 「決まりだから守らなければならない」。 我々が社会生活を送る上で疑いようのない命題である。子ども達にしっかりと教える必要がある。しかし,これだけで片付くのであれば,社会科は不要である。ルールに従う受動的な子を育てるだけでは,社会科の価値はないのである。 ゴミの学習では,分別の方法,ゴミを出す場所,日時,袋(有料の場合も)などの決まりに出合う。社会科授業では,なぜ決まりを守ることが大切なのかを感じさせたい。そこには,健康で衛生的な暮らしを望む人々の願い,自然環境への影響を減らすことを求める社会の願いもある。ゆえに,大規模で効率的に処理する事業が営まれている。 いかなる社会的な仕組みやルールにも,人々の願いが込められている。子どもがみんなの願いを大切にしながら,自分の願いを育てることが社会科の使命であろう。 一方で,みんなの願いとは,自明のものではない。グローバル化にともない,外国人にゴミのルールを説明するための努力が,自治体や地域で取り組まれている。ゴミ出しの方法を外国語に翻訳したり,丁寧な説明を行ったりしている。しかし,最も重要なのは相互理解である。ゴミを分別する習慣のない国から来た人々は,なぜ分別を行う必要があるかわからない。ルールを説明しても,分別収集する意義が理解されていなければ,守ってもらうことは難しい。 ルールを押し付けるだけでは,多文化共生社会は実現しない。むしろ,ルールの意義やそこに込められた願いを理解してもらうことが大切である。相互理解には,相手の考え方の理解とともに,自分たちが大切にしている価値=願いをわかってもらう努力も含まれる。互いに願いを大切にし合う関係を構築することも,社会科の使命であろう。願いを感じ,願いを育てる,社会科授業の使命名古屋大学大学院教授 柴田 好章柴田 好章(しばた よしあき)専門分野/教育方法学,授業研究主要著書/『授業分析における量的手法と質的手法の統合に関する研究』(風間書房,2002年)『授業研究と授業の創造』(共編著,渓水社,2013年)日本文教出版『小学社会』教科書著者社会科NAVI 2019 v ol.21 3