ブックタイトル社会科NAVI Vol.21
- ページ
- 4/24
このページは 社会科NAVI Vol.21 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 社会科NAVI Vol.21 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
社会科NAVI Vol.21
2020東京大会を前に,オリンピック・パラリンピックの機運は醸成されてきていますが,特にパラリンピックに関してはまだまだ盛り上がりに欠けているように感じられます。 史上最高の大会と称される2012ロンドンパラリンピック競技大会では,278万枚のチケットが完売し,競技会場は連日満員。観客動員をかけて集客する時代に終止符が打たれた大会でした。 イギリスはパラリンピック発祥の地でもあるため,元々関心が高かったのではないかと思われがちですが,イギリス政府が大会招致決定後に行った世論調査で,「チケットを購入し,パラリンピックを見に行きたいですか?」という設問に対し,Yesと答えた人はごく僅かだったという統計が残っています。競技観戦にほとんど興味がなかった人たちが,実際に競技場に足を運ぶまでの間に,一体何があったのでしょう。 大きく貢献したのが,教育現場だと言われています。オリンピックとパラリンピックの価値をベースにした「Get Set(ゲットセット)」という教育プログラムが活用され,障害のある人たちに対する認識の変化が起こったと報告されています。子供たちがオリンピック・パラリンピックに興味や関心を寄せたことで,周りの大人たちも巻き込まれていったという構造がありました。 日本ではオリンピック・パラリンピック教育というと,その担当を任されているのは体育の教員1パラリンピック成功の鍵は教育現場にある2や,スポーツが得意な教員が多いようですが,私は社会科の教員の皆様に期待を寄せています。 パラリンピック教育といって連想されるのが,選手を招いた講演会や,競技の体験会で,どちらも外部から講師を招き,授業をお任せするパターンをよく耳にします。体育以外では道徳で扱う場合もあるようですが,実は社会科で扱って頂く内容が多いことをご紹介します。 国際パラリンピック委員会は「パラスポーツを通してインクルーシブな社会を構築すること」を究極の目的としています。インクルーシブな社会は,「共生社会」や「包摂する社会」などと解釈され,誰も排除されず,それぞれが活躍の場を与えられる社会のことだと理解しています。 なぜ,大会の開催がインクルーシブな社会の構築に結びつくのでしょうか? ご存知の通り,パラリンピックには,多種多様な選手たちが出場します。その選手たちそれぞれが活躍できるのは,ルールや用具などに工夫があり,個々の能力を最大限に活かせる環境があるからです。金メダルを獲得した選手でも,社会の受け入れ態勢や,環境が整っていない状況では,社会活動に参加することや,自由に行動することすらできません。パラリンピック教育は,大会の歴史やスポーツのルールなどを教えるだけが目的ではありません。公平性を担保するために考え抜かれたルールや用具の工夫,サポートスタッフの関わり方などを学び,それを実社会に反映させ,私たちが住んでいる社会をより良いものに変えていこうとする行動を促すという大きな役割もあるのです。スポーツの祭典という範疇にとどまらず,誰もが居心地の良い居場所を見つけられる社会を創造するための題材でもあるのです。パラリンピックを題材に,共生社会について考える教材を,是非ご活用ください。パラリンピック教育の担い手は,社会科教師!パラリンピック教育と公認教材●日本財団パラリンピックサポートセンタープロジェクトマネージャー マセソン 美季4 社会科NAVI 2019 v ol.21