ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

社会科NAVI Vol.21

 国際パラリンピック委員会は,公認教材 I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル)を開発しました。 この教材を翻訳し,さらに日本の教育現場で使いやすいようにした「I’mPOSSIBLE日本版」を,(公財)日本障害者スポーツ協会日本パラリンピック委員会,日本財団パラリンピックサポートセンター,ベネッセこども基金が共同で編集開発しました。座学と実技で構成され,パラリンピックの歴史や意義,競技の魅力などを学ぶだけでなく,共生社会を構築するための考え方や障害理解なども学べる内容です。 教材の名前は,I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル=私はできる)で,不可能(インポッシブル=IMPOSSIBLE)に「‘(アポストロフィ)」を加えるだけで意味が変わるように,ほんの少しの工夫でできることが増えたり,可能性が広がったりすることを伝え,子供たちが困難にぶつかっても,諦めずに様々な工夫を凝らし解決する力を養って欲しいという願いも込められています。お問い合わせは,I’mPOSSIBLE日本版事務局iampossible@parasapo.tokyoまで。マセソン 美季(ませそん みき)日本財団パラリンピックサポートセンターで,国際パラリンピック委員会公認教材開発の中心的な役割を担う。IOC/IPC 両方の教育委員を務め,スポーツの価値と教育の力で共生社会の構築を目指す。1998 年長野冬季大会金メダリスト。● 2014年に日本は障害者権利条約を締結しました。これは,障害のある人の人権や基本的自由を守るための約束事です。第2条には「合理的配慮(障害のある人たちが困ることをなくすため,周りの人たちがすべき無理のない配慮のこと)」をしないことは差別であると書かれています。第9条では,建物や公共の乗り物,情報や通信などが障害者にとって使いやすくなるように定められ,生活していく上でのバリアを無くしていくことが記されています。 この条約には,「障害の社会モデル」という考え方が反映されています。「障害」は,個人の心身機能と,社会的障壁(環境・周囲の態度・理解など)の相互作用によって作り出されているもの。という考えです。例えば,足が麻痺していて歩けないため,車椅子を利用している人が,地下鉄に乗りたい場合を考えてみてください。車椅子ユーザーの移動の自由が担保され,駅の改札やホームまで降りられるエレベーターがあり,ホームと電車の間に隙間や段差がなければ,そこにバリアは存在しません。ところが,階段しかない場合や,例えば「車椅子を利用している人は,混雑時には,駅や電車の利用を控えてください。」などというルールが存在したり,エレベーターがあっても利用時間が制限されて使えなかったりした場合,それが障壁になってしまいます。障害者権利条約は,社会的障壁を取り除くのは,社会の責務であるという「障害の社会モデル」の考え方を反映し,浸透させ,徹底していくことが必須であることを示しています。 パラリンピック教育は,この条約の考えに即しています。私たちの未来を担う子供たちが,この考え方を身に付けてくれたら,その子たちが将来,物を作ったり,サービスを提供したり,法を整備したりする立場になった時,その考えが随所に反映され,その結果,社会は,より多くの人たちにとって住みやすい状態にどんどん変わっていくのです。パラリンピック教育には,こういった考え方の種まきをする役割があります。3障害の社会モデル 4公認教材 I’mPOSSIBLE(アイムポッシブル)▲ 教材を使って授業をする様子。  写真提供:日本財団パラリン  ピックサポートセンター社会科NAVI 2019 v ol.21 5