ブックタイトル社会科NAVI Vol.22 2020年度版『小学社会』教科書特集号

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概要

社会科NAVI Vol.22 2020年度版『小学社会』教科書特集号

 新版教科書『小学社会』の第4学年は,六つの単元から構成される。 これまでの3・4年下と比べると大きな変更がある。学習指導要領が3・4年から,学年ごとに独立し,4年生は,自分たちが住んでいる県を中心に学習する。学習指導要領に示される内容は五つであり,基本的に『小学社会』もその順序に従っている。ただし,学習指導要領においては一つの内容項目である「県内の伝統・文化,先人の働き」が,教科書においては二つに分かれている。 それでは,単元ごとに,従来の教科書との違いや,学習指導要領の改訂の趣旨を受けた新版教科書の特徴について見ていきたい。―新版教科書を使って 期待すること―    新たな大単元「自然災害から人々を守る活動」では,県内で過去に発生した災害について概観したうえで,代表的な災害に焦点化して,災害が起きたときの対処や, 未然に被害を防ぐ(減らす)ための備えについて学習する。 従来は,選択によって火災の代わりに学ぶ位置づけであったものが,今回の学習指導要領の改訂によって独立した。 教科書P.70-71では,県内(教科書で扱っている事例は東京都)で過去から現在に至るまでに起こった様々な自然災害を写真でもって概観できるようになっている。子どもたちが写真や資料をもとに,地震災害,風水害,火山災害などの恐ろしさや被害の大きさを感じることによって,対処や備えについて切実感をもって調べ考えようとする意欲を醸成したい。 その後は,一つの具体的な事例にしぼって,より深く学習を展開する。教科書では,東京都杉並区の水害が取り上げられている。教科書P.74-75の普段と増水時の川の写真の比較や,大雨の際の雨量と水位の移り変わりのグラフなどから,実際の災害を理解したうえで,「水害から人々の命を守るために,どのようなくふうや努力があるのだろう。」という学習問題をつくり,学習計画を立てる(P.75)。 まず第1大単元「わたしたちの県」は,3・4年下の教科書の最終単元の一部に位置づいていたものが,独立したうえで最初の大単元となった。最初の大単元で県の地理的環境の概要を理解することは,県を単位とする1年間の学習の導入の役割を担う。また,47都道府県について従来は単元外の地図学習のなかに位置づいていたが,学習指導要領で「名称と位置を理解すること」が明記され,教科書でも第1大単元のなかで取り上げることになった。 第2大単元の「健康なくらしを守る仕事」では,ごみと水を学習する。選択として,ごみの代わりに下水,水の代わりに電気またはガスが学ぶことができるように,教科書では取り上げられている。 第3大単元の「自然災害から人々を守る活動」は,新たに独立した単元である。なお,従来3・4年下に配置されていた警察と消防は,3年に位置づけられることになった。 第4大単元の「くらしのなかに伝わる願い」では,昔から伝わる建物や祭りについて学習する。従来にも増して問題解決学習が色濃くなり,伝統を伝承することの大切さや難しさに気づき,自分たちに何ができるかを考えることが重視されている。 第5大単元の「地いきの発てんにつくした人々」では,開発,教育,文化,産業などに新しく医療が追加された。新版教科書では,開発を中心教材として取り上げ,その他を選択教材として取り上げている。当時の世の中の課題や人々の願いを考えることが重視されている。 第6大単元の「わたしたちの住んでいる県」では,第1単元とともに,従来は一つの単元として,最終単元に位置づけられていたものである。県内の特色のある地域として,地場産業,自然環境に,国際交流が新たに加わり,外国人が多く住む市における多文化共生の取り組みを学習する。 そして,学習計画にしたがって,水害の原因(P.76-77)や,水害を防ぐ施設(P.78-79),自然の力(P.80-81),情報の働き(P.82-83)について,資料をもとに学んでいく。ただし,子どもたちが単に調べ,まとめ,発表すれば,深い学びに至るわけではない。重要なのは,単元をつらぬく問題意識である。『災害による被害を少しでも防ぎたい・減らしたい』というのは人々の〈切実な願い〉である。そのためには,水害の原因についても,水害を防ぐための仕組みや人々の働きも知らなければならない。切実な願いに基づいた問題解決学習が展開されることによって,さらに考えたい問題として,「自然災害から命を守るために,わたしたちには,どのようなことができるのだろう。」(P.83)が生み出される。 そして,単元の終末では,市や県や関係機関の働きを人々の生活と結びつけながら,災害への対処における公助・共助・自助の大切さを考え (P.84-85),災害への備えとして自分たちにもできること(P.86-87)を選択・判断できるようにする。 新版教科書では,三つの部分から構成されている。まず,自分たちの身近な事象に出合い学習問題を形成する。次に,学習問題の解決に向けて調べ,人々の願いを実現するために連携しながら工夫や努力をしている社会の仕組みを学ぶ。そして,自分たちにできることをさらに考える。 一連の学習によって,子どもたちが自分ごととして社会に起きていることを捉え,豊かに生きていくための基盤を形成していくことを期待したい。自然災害から人々を守る活動-4年について―1わたしたちの県 1わたしたちの県のようす2健康なくらしを守る仕事 1ごみのしょりと活用 2くらしをささえる水3自然災害から人々を守る活動 1自然災害から命を守る4くらしのなかに伝わる願い 1わたしたちのまちに残る古い建物 2わたしたちのまちに伝わる祭り5地いきの発てんにつくした人々 1原野に水を引く6わたしたちの住んでいる県 1伝統的な工業がさかんな地いき 2土地の特色を生かした地いき 3世界とつながる地いき4年の単元配列名古屋大学大学院教授 柴田 好章P.70-71P.74 P.75P.744年生 わたしの提案20 社会科NAVI 2019 v ol.22 社会科NAVI 2019 v ol.22 21