ブックタイトル社会科NAVI Vol.22 2020年度版『小学社会』教科書特集号

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社会科NAVI Vol.22 2020年度版『小学社会』教科書特集号

 新版教科書『小学社会』の第6学年は,下に示したような単元配列になる。これまでと大きく違う点は,歴史学習「日本のあゆみ」の前に「わが国の政治のはたらき」という憲法や政治に関する学習があり,それをもとに歴史を学び,そのうえで「世界のなかの日本とわたしたち」を学ぶ構成となった点である。学習指導要領の改訂に則して,これまでとは違った斬新な「サンドウィッチ」構成となった。 さて,日本国民の多くは,自身が戦火にさらされないことを前提としてくらしている。それは,日本る。子どもたちが疑問をもって対話して学びを深める学習のきっかけやヒントになる情報が教科書にはある。それに気づかせる使い方を特に期待している。つまり,覚えさせるための教科書ではなく,子どもたちが疑問を見つけ,教科書の資料を使って,考えをまとめ,自分なりのノートをつくって友だちと対話する。そのような学習活動のために教科書を使うチャンスを子どもたちに与えたい。○歴史では今との違いや共通点に気づかせる 6年生で大きなウエイトを占める歴史学習。新版教科書の歴史学習のスタートは,大阪府堺市の上空からの航空写真である。現在のビル群の中に前方後円墳が散在している。子どもたちが歴史博物館を訪ねて質問している様子もある。また,各時代に,その時代を象徴する人々のくらしを描いたイラスト(想像図)がふんだんに載せられている。イラストは,昔の様子だけでなく,子どもたちが対話しながら学習問題をつくり,それを調べ,自分たちの考えをまとめていく場面も描かれている。 対話学習は,答えを覚える学習でなく,答えを見つけ出したり,つくり出したりする学習の基本型だが,歴史学習の場合,今と違う昔の常識に気づかせたいものである。その頃の人たちは,なぜ(今と違って)そのようにした(考えた)のか?それを追究するなかで,今と同じではないか?という共通点にも気づく子どもがいるかもしれない。いろいろな見方で迫る学習が期待される。○教科書から気づく「矛盾」 教科書から矛盾に気づく子どもたちがいる。例えば,明治時代に描かれた帝国議会の絵がある。教科書P.181には,対話する男女4人の子どもたちが国憲法が「平和憲法」として社会に定着しているからである。しかし,それは決して当たり前ではない。歴史を学ぶと,これまでの人類の歴史のなかで,平和にくらせることが貴重なことであることに気づくことだろう。教科書には,戦乱をへて社会が変わってきたことが描かれている。だからといって,戦争で社会を変える市民を育てることが,社会科の目的ではない。だから,憲法が平和日本の基本であり,それにもとづいて政治がおこなわれているという今の社会の仕組みを学ぶことは,歴史学習の基礎でもある。子どもたちは,現在の法律や政治の仕組みを理解したうえで,そうではなかった過去を,今と比較しながら,自ら疑問をもって学ぶことになるだろう。そのなかでの気づきや発見が,学年の終末に,これからの国際社会での日本の役割と自分自身の未来を考える学習へとつながっていく。 ところで,「憲法」や「政治」といっても,子どもたちがそれを身近に感じるためには,それに関わる仕事をしている人たちとの出会いが大切である。教科書では,市役所や裁判所などで働く人が登場する。災害をなくす努力など,子どもたちにとって大切だと感じられる内容から,人権や行政を考えることができるように,内容が工夫されている。子どもたちにとって大人への道しるべとなる構成である。  ―新版教科書を使って期待すること―○今までの社会科学習で身につけた力を使おう 新版教科書の表紙見返しには,「見学しよう」「調べよう」「話し合おう」「資料を読み取ろう」「やってみよう」のキャプションとともに子どもたちの学習場面が紹介されている。また,第1大単元「わが国の政治のはたらき」には,3年生から5年生までの学習を子どもたちがふり返る場面がある。6年生の学習は,5年生までの社会科学習の延長線上にあ描かれているが,比べてみて大きな違いに気づく。明治の絵に描かれているのはすべて男性である。 江戸時代,「蘭学のはじまり」には,医学発展の功労者である杉田玄白と前野良沢の肖像画が生没年つきで載せられている。いずれも江戸時代に描かれた肖像画である。杉田玄白の絵に疑問をもつ子がいる。前野良沢と入れ替わった誤植ではないか?と。たしかに良沢より10歳若いはずの玄白が良沢より高齢に見える。二つの絵は描かれた時期が異なっているので,見た目の逆転が起きているのだが,それへの気づきである。教科書は,玄白らの解剖場面のイラスト(想像図)も載せている。良沢48歳,玄白38歳で描かれている。この想像図を見た子どもたちの,図の中のだれが玄白なのかと脱線?する姿も楽しみである。1 わが国の政治のはたらき 1 憲法と政治のしくみ 2 わたしたちの願いと政治のはたらき2 日本のあゆみ 1 大昔のくらしとくにの統一 2 天皇を中心とした政治 3 貴族が生み出した新しい文化 4 武士による政治のはじまり 5 今に伝わる室町の文化と人々のくらし 6 戦国の世の統一 7 武士による政治の安定 8 江戸の社会と文化・学問 9 明治の新しい国づくり 10 国力の充実をめざす日本と国際社会 11 アジア・太平洋に広がる戦争 12 新しい日本へのあゆみ3 世界のなかの日本とわたしたち 1 つながりの深い国々のくらし 2 国際連合と日本の役割6年の単元配列―6年について―愛知教育大学教授 土屋 武志P.180-181P.156教科書で小学校社会科の集大成を6年生 わたしの提案24 社会科NAVI 2019 v ol.22 社会科NAVI 2019 v ol.22 25