ブックタイトル社会科NAVI Vol.22 2020年度版『小学社会』教科書特集号

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社会科NAVI Vol.22 2020年度版『小学社会』教科書特集号

に,メインとなる学習者を登場させて問題を展開しています。一人の子どもによる疑問や意見を提示することにより,自分ならどう思うかを意識するようなしかけになっているのです。  これは,子どもたちがみんなで考えたり,調べたりという学習経験につなげやすいのではないでしょうか。学習の見通しが自然につくりやすいですね。そこから,見方・考え方を手がかりとして,どんなものをどういうふうに調べたらいいのか。調べるだけではなくて,まとめ方や取り扱い方をどうするのか。グループで話し合い,比較することで,自分にとって一歩進んだ答えを見つけられるようになるかが重要です。安野:子どもたちが,知っているつもりでも,実はよくわからないといった「素朴な問い」に出合い,事実や証拠を集める。それをもとに「深まった問い」を見つけ,社会のしくみや人々の働き,その意味をみんなで考える。その過程で事実を見つめる力や考察する力を身につける。そんな素朴な問いが深い学びへと発展していく問題解決をめざしたいのですが時数が足りない。この悩みの解れまでは,個別にふり返っていましたが,今回は食料生産や工業生産全体として考える構成にしています。そうしないと全体を見渡せない。これからは,思い切ってやらないといけないですね。その発想のもとが,今回の教科書にあります。例えば,途中で内容を縮小して進めても,最後にまとめがあるから大丈夫であると。先生方は教科書の流れで進めるだけでも,最低限の学習効果を図っていけるのです。安野:知識の定着を主眼にすると,単元を小さく切った方が指導しやすいですね。でも,資質・能力を育てるためには,食料確保など一つのテーマについて,いろいろな角度や立場から多角的に考えるということを大切にしていきたいですからね。 しかし,このような学びを進めていくにあたっては,学年が上にいくほど,どうしても教科書が厚くなってしまうという課題がありました。小学生が教科書などをランドセルで何冊も持ち歩くことを考えると,今まで以上に重くはできません。そこで自慢したいポイントがあるのですが,新しい『小学社会』は,紙の重さを考慮して,軽量化に成功したのです。ふり返りの学習でも,上下巻が分冊になっている教科書と違って,1冊にすべてがまとまっているという点も,効率的に使えるのではないかと思いますね。代表監修者から現場の先生方にメッセージを的場:教科書は世界に開かれた扉,世界を見る窓だという感覚を,まず先生方にもっていただきたいです。教科書は道具であって,友だちと意見を交流する媒介物のようなものです。みんなで調べたり,資料を探してきたり,問題解決学習を進めたりするために,教科書は考え方の仕組みの提案だと捉えてほしいです。そして,子どもたちが今もっている力を信じて,学級づくりをしてほしいなと思います。問題解決学習の一番大切なところには,子どもの視野に入るということ。常にあき決には単元や教科間のつながりを活用することが不可欠です。 例えば,3年生の最後に,市の様子の移り変わりを扱う単元があります。それとの関連を見通したうえで,最初の市の様子の学習を展開する。その際,生活科で自分たちが町を歩いたことを想起させれば,一つの学習の縦のつながりができる。さらに学年を超え,中学校までも見通した縦のつながりや,他教科との横のつながりなど,カリキュラム・マネジメントに活用できる教科書を目標として作成しています。 指導内容が増えているのに時間数は変わらないという現場の悩みを解決するために,学習をより効率よく展開できるよう工夫しているのです。池野:『小学社会』については,問題解決学習を三段階で,ステップアップできるように構成しています。第一段階では,問題を見つけることによって,どういうふうにしたらいいか。第二段階では,それを一種の手がかりにしながら,解決策を模索しながら,では,どういうふうに調べていって考察しているか。第三段階では,その中で一定の知識と能力と技能を身につけることによって,どのように達成していくか。見方・考え方を通して,どういう目的地や目標まで到達すれば,その単元が子どもたちにとっていいのか。子どもたちがそこからもっと新しい問題を見つけてくれれば,次の問題につながります。初めに手がかりにした見方・考え方を,探究的に発展させることになるのです。どの学年でもいえることですが,すべての単元に対して,同じように重点的にやってしまうと,時間数が足りなくなります。『小学社会』では,1学期での学習は丁寧にし,2学期,3学期では1学期の学びを活用して学習できる構成にしています。調査やまとめといった活動は,後半の単元にいくほど,子どもたちが既習経験を生かして自分でやれるような内容になっています。紙面を通してこれらの工夫を先生方に理解していただけるとうれしいですね。的場:5年の食料生産と工業生産のところを,こらめずに,問題に対して先生方も自分の言葉で語ってほしいですね。池野:問題解決学習を踏まえながら,子どもたちが予測困難な未来社会へ立ち向かうための力をつけてほしいですね。社会との関係をもっと緊密にとりながら,社会の問題を自分の問題として捉えるようになれるのが理想です。公民としての資質をはじめ,今の社会科の目標となる主権者としての力をつけていってもらいたいですね。安野:今回の『小学社会』は,ひとことで言うと 「本気の学び」です。これからの社会科では,個々が自分の意見をもち,対話で考えを深め合っていく主体性のある学びが求められています。そのために,まず子どもたちの問いを大切にし,できれば先生も子どもと同じ土俵で一緒に考えてほしいですね。そうすると,子どもが同じ一人の人間として社会のさまざまな問題を自分事として本気で考えるようになります。子どもと先生が本気で問題解決に取り組めば,未来社会を切り拓く子どもが育つ,より価値のある社会科の授業が創れるはずです。子どもと本気で取り組む, 問題解決学習を池野範男 的場正美8 社会科NAVI 2019 v ol.22 社会科NAVI 2019 v ol.22 9