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概要

社会科NAVI Vol.23

授業力アップをめざす先生のための小学校編●國學院大學教授 安野 功対話的な問題解決~「自分発⇒みんな経由⇒自分行き」の学び~問題解決的な学習の充実を図る第2のステップは,学習問題を把握し,追究・解決するプロセスにおいて,子ども同士が対話しながら学び合う学習に力を入れることです。ここでは,教師が一人一人の子どもの主体的な学びを大切にしながら,それぞれが知恵を出し合い,互いの考えに学び合う「自分発⇒みんな経由⇒自分行き」の学びを豊かに展開できるよう,様々な指導の手立てを工夫していくことが大切です。 イメージをつかむために,第3学年「かまぼこ工場の仕事」を事例に取り上げて説明していきます。 単元の導入で,まず教師は,市内でつくられ販売されている2種類のかまぼこを提示します。子どもは包装紙の文字や中身を見比べ,気になったことをノートにメモし,話し合います。「製品名が習字の文字で書かれているほうが美味しそう。食べ比べてみたいな」みんなの意見は一致します。実際に食べ比べてみると・・・。「やっぱり美味しい!」  次に教師は,それぞれの製品をつくっている工場の写真を提示します。「 美味しいかまぼこは,大きな工場ではなく,学校の近くの小さな工場でつくられているものだったんだね」「でも,同じかまぼこなのに,どうして学校の近くの工場でつくっているほうが美味しいのかな?」 ここで教師は,みんなが抱いた素朴な問いを拾いあげ,「美味しさの1 番の決め手は何だろう」と板書し,包装紙に書かれていたことや実物を見比べ,気づいたことなどを手がかりにして,自分の考えをノートにメモし,ペアで伝え合うよう指示。そこで出された意見を全体で大きく三つに整理します。〇近くの港でとれた新鮮な魚を使っているから〇一つ一つを手づくりしているから〇特別な味つけをしているから そして,個々の子どもに,「三つのなかから一つを選び,工場見学で確かめたいことをノートにまとめましょう」と指示するのです。 例示の学習活動は「自分発⇒みんな経由⇒自分行き」の学びで組み立てられています。「自分発」の学びとは,全ての子どもが自分の考えをもって他者と関われるようにすることです。美味しさの1番の決め手は何か,個々の子どもが自分の考えをノートにメモする活動がこれに当たります。「みんな経由」の学びとは,それぞれの考えをペアで伝え合ったり,みんなで話し合ったりすることです。ペアでの伝え合いや全体での話し合いを経て出された意見を大きく三つに整理する活動がこれに当たります。「自分行き」の学びとは,みんで学び合ったことを参考にして自分の考えを再度検討し,最終的な考えをまとめることです。三つのなかから一つを選び,工場見学で確かめたいことをノートにまとめる活動がこれに当たります。どの子も自分の考えをもって話し合いに参加し, それを参考に自分の考えを再度検討できるようにしよう!10 社会科NAVI 2019 v ol.23