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概要

社会科NAVI Vol.24

授業力アップをめざす先生のための小学校編●國學院大學教授 安野 功深い学びへと導く問題解決~問いのリレー「素朴な問い」から「深まった問い」へ~ 問題解決的な学習の充実を図る第3のステップは,主体的・対話的な問題解決の質を高め,そこでの学びが次第に深まるよう子どもたちを導くことです。ここでは,子どもの問いがリレーのごとくつながり,「素朴な問い」から「深まった問い」へと段階的に深まるように,教師が様々な指導の手立てを工夫していくことが大切です。 イメージをつかむために,第5学年「自然災害から人々を守る」を事例に取り上げて説明していきます。 単元の導入で,まず教師は,日本の各地で頻発している水害の写真を提示したり,国土の自然などの様子について学習したことを想起させたりしながら,「国土全体に目を向けると,どんな自然災害がおきているのだろう」という「素朴な問い」を引き出します。そして,近年,日本の各地でおきた主な自然災害の写真と位置,年表などで事実を確かめ,日本ではいつでも,どこでも,だれでも,自然災害の被害にあうかもしれないという問題意識を醸成します。そのうえで,「なぜ,日本では自然災害が多いのだろう」「自然災害がおきると,国民のくらしや産業にどんな影響があるのだろう」という「一歩深まった問い」を引き出すのです。 次に,その問題追究をとおして自然災害がおきやすい国土で安心・安全にくらしていくには,どうすればよいのかという新たな問題意識をもたせ,自然災害から命やくらしを守るための備えや対策に目を向けさせていきます。そして,ニュース番組などから得た既有の知識をヒントに,国や県,市などが備えや対策を行っているはずだと推理させ,「自然災害から人々を守るために,だれが,どのような取り組みを行っているのだろう」という「深まった問い」を引き出します。 最後に,阪神・淡路大震災で人々が経験した「公助の限界」の問題に出合わせ,「自然災害から命を守るために,自分たちに何ができるだろう」という「さらに深まった問い」を引き出します。そして,みんなで知恵を出し合い,そのなかから個々の子どもが自分の判断でよりよいと考えるものを選択できるように導くのです。 例示のように,社会科では三つの段階で問いを深化させ,深い学びへと子どもたちを導いていきます。 第1段階では,「どんな~だろう」のように“様子や現状など目に見える事実を追究する問い”を引き出します。この事実の積み重ねをとおして,第2段階の「なぜ~だろう」「~のために,だれが,どんなことをしているのだろう」など,“背景や要因,人々の社会的行為と意図や目的との関係(社会的意味)を追究する問い”を引き出すのです。この社会的意味の追究が,小学校社会科では最も重要であり,第3段階の問い,例えば「~ために,自分たちには何ができるのか」など,“社会に見られる課題を把握しその解決に向け,よりよい解決策を考え,選択・判断する学習活動へと子どもを導く問い”を引き出す原動力となるのです。子どもの問いが「素朴な問い」から「深まった問い」へと段階的に深まるよう,教師が指導の手立てを工夫しよう!10 社会科NAVI 2020 v ol.24