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概要

社会科NAVI Vol.24

vol.7わたしの社会貢献 私の専門は,政治学の中で,政治過程論と呼ばれる現代政治分析です。内閣や政党,官僚,政治家,そして選挙や政権交代などを扱う専門家が多い分野です。私はといえば,学生時代に「市民」「市民社会」ということばに出会って以来,市民運動や大衆運動,圧力団体に関心を持ち,集団を中心に分析していました。そのため,社会貢献といっても,労働団体の講演会や研修会に呼ばれたり,たまに地域の選挙の解説を頼まれるくらいで,あまり貢献らしいものはしてこなかったように思います。しかし,ある時から少しだけ仕事が増えました。 それは,自治会・町内会(以下自治会)の全国調査をしたためです。「市民社会」という言葉は日本では似た言葉の公民(的分野)という教科があるせいもあり,教科書では登場しない言葉です。一般のメディアで使う頻度は増えていますが,未だに曖昧なとらえ方をされているように思います。「市民社会」は,今世紀には欧米だけでなく世界的には普通に使われているのに,日本では実態が分からないのです。私はその姿を明らかにするためにいろいろな調査をしてきました。 その一つが全国自治会調査で,2007年に全国市区町村の約半数890 の自治体から協力を得て,30万ある自治会のうち3.3万に調査票を配布し1.8万以上の自治会から回答を得ました。この調査ができたこと自体がたいへんな成果だと思います。というのは,これまで全国の自治会に調査することは総務省などの中央の役所もできなかったこと さて,全国自治会調査の本は純粋な学術書でしたが,少しずつ知られるところとなり,私の生まれ故郷である東大阪の自治会連合会総会で講演しました(写真1)。東大阪は岡山地方とともに連合会活動の中心的な地域です。すると,自治会を支援する市民運動(現在,一般社団法人全国自治会活動支援ネット)をしている方から,いろいろ助言依頼を受けるようになり,何度か,またこの地域で講演しました。この市民運動からはまた「河内観光局」という運動も派生し成長(一般社団法人河内観光局)し,毎年いろいろなまちづくりの催しがなされています。大自治会・町内会の比較政治と「市民社会」の全体像全国自治会調査大阪・河内の市民運動との連携●東海大学教授・筑波大学名誉教授 辻中 豊▲ 図1. 全国自治会調査(2007) 対象の地図なのです。図1はその時に協力してくれた自治体を図示したものです。 この全国自治会調査の結果をまとめた『現代日本の自治会・町内会』(木鐸社,2009年)は,2014年に英語でも出版されました。集団の政治過程研究12 社会科NAVI 2020 v ol.24