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概要

社会科NAVI Vol.24

 さて,全国調査をきっかけに,市民運動の方々からいろいろ教えていただきながら,社会貢献活動をすることは,私の市民社会研究の視野をずっと広くすることにつながりました。中央政治に近い圧力団体(1980年~)から始めた調査は,ローカルな社会団体一般(1997年~)に広がっていたのですが,いまでは自治会などの住民組織まで国際的な視野に収める必要を強く感じるようになったのです。 そうすると,中国では,社区居民委員会や村民委員会という組織がやや類似していることが分かってきました。北京大学の袁えん教授(写真2)は少子高齢化が進む中国では,日本の自治会のような組織が果▲ 写真1 東大阪の市民団体での講演● 辻中 豊(つじなか ゆたか)専門分野/政治学主要著書/『大震災に学ぶ社会科学 第1巻 政治過程と政策』(東洋経済新報社,2016年),『現代日本のNPO 政治―市民社会の新局面( 現代市民社会叢書)』(木鐸社,2012 年),『現代日本の自治会・町内会』(木鐸社,2009 年),『利益集団(現代政治学叢書)』(東京大学出版会,1988年),日本文教出版『中学社会』教科書著者阪の河内地方というのは,北は枚方,寝屋川から,中央の東大阪,八尾,そして南は河内長野,千早赤阪まで大阪府の東半分をしめる地域で,古代には天皇の在所(宮)も置かれた歴史もありますが,「観光」や「歴史資源」という意味ではあまり注目されてこなかった場所です。そのほかにも大阪の地元で教育や文化活動をしている市民運動(NPO法人育プロ)からもいろいろ助言を求められるようになりました。 自治会の会長をされている研究者は多いのですが,実は私は回覧板を回すくらいで,たいして実態について知らなかったのです。同じように市民運動を研究の出発点にしながら,NPO法人や一般社団法人の実際については疎かったのです。その点でこれらの社会貢献活動はとても勉強になりました。たす役割が重要だと真剣に調査しはじめ,筆者と共同研究を進めています。タイでも都市部に自治会組織chumchon yoi nai khet tessaban(写真3)があり,ウズベキスタンにはMohalla committee,韓国にも班常会など,アジアの大部分の地域で,同様の組織や集団が活動していることに気づき,日本との比較を進めています。その結果21世紀に入って,草の根の市民社会の役割が世界的に注目されていることが分かってきました。アジアの自治会との比較へ▲ 写真2 北京大学の袁教授:日本の自治会町内会に興味を持ち,  中国で調査を行い,説明するところ。▲ 写真3 タイのムラの「自治会」の集会所で活動の説明を聞いているところ。社会科NAVI 2020 v ol.24 13