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概要

社会科NAVI Vol.24

ワールドシネマみんぱくvol.23 「ROMA/ローマ」●国立民族学博物館教授 鈴木 紀 「ローマ」は,メキシコシティのローマ地区に住む家族を描いたモノクローム(白黒)の映画である。2019年のアカデミー賞で10 部門にノミネートされ,監督賞,外国語映画賞,撮影賞を獲得した。この映画はまた,映画配信サイトのネットフリックスが配給した作品であるため,「劇場で名画鑑賞」という映画ファンの常識を覆した点でも話題を集めた。 「ローマ」では,メキシコ人の家庭生活と1970 年代初頭のメキシコ社会が描かれる。しかしそうした家庭と社会の間の関係は必ずしも十分説明されずに,物語が進行していく。世界の映画から社会について学ぶという本欄の趣旨にのっとり,ここではこの映画からメキシコの何が学べ,何が学べないかを考えたい。2018 年アメリカ・メキシコ映画 135 分監督/アルフォンソ・キュアロン家庭生活 「ローマ」の主人公は,クレオという名前の住み込みの家政婦である。彼女はメキシコ南部オアハカ州出身で,先住民言語のミシュテカ語を話す。クレオが暮らす家庭は,医師の父,教師の母,4人の子供,そして足の不自由な祖母の7人家族である。仕事で忙しい母ソフィアにかわって,家事を切り盛りするのはクレオと,彼女と同郷の家政婦アデラである。 家政婦とはいえ,クレオはすっかり家族の一員となっている。とくにクレオと子供達の親しさには驚かされる。日常会話はスペイン語だが,クレオは子供を寝かしつける時にミシュテカ語の子守唄をうたう。兄弟喧嘩をして落ち込む末っ子のぺぺの気持ちに寄り添ってあげるのも彼女の役割だ。またソフィアとクレオの間に芽生える女性同士の連帯感も,物語の重要な要素でローマ:1970 年代のメキシコの家庭と社会N?etthfleix uオ-rリa-mジiナ-li ルpr映oje画ct『ROMA/ローマ』 独占配信中14 社会科NAVI 2020 v ol.24