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概要

社会科NAVI Vol.24

リレーエッセイ 6年「天下統一」で,子どもたちは「信長の勢力の広がり」の地図を見て,「すごい勢いで広がっている」「無敵だ」などとつぶやいた。「攻められたら嫌だな」「抵抗すると皆殺しにされた」「早めに味方になった方がいい」などが続いた。ある子どもが「家来になると信長にパワハラされるよ」と言った。そして「比叡山焼き討ちに行けと命令されたらどうしよう」「罰が当たる」「地獄に落ちる」と続く。「断わればいい」「無理だ。殺される」「逃げる」「家族が人質にされている」などが出された。 子どもたちは戦国時代について,「強い者についていないと生き残れない。だけど強い者から嫌な命令をされても断れない」という「共通了解」(概念)を構成した。そして「戦争や武力以外で解決するにはどうしたらよいのか」という問いが生まれた。 続く「江戸幕府による政治」では,ある子どもから「家光って,『生まれながらの将軍』と上から目線で威張っているとつぶやきが出された。そして「反抗すればいい」という考えに対して,「戦国時代に逆戻りだ」「大名配置図を見ると,前田氏も江戸まで攻めるには,途中に親藩がたくさんあって難しい」などが出された。ある子どもが「生まれによって身分が決められ威張っている人がいても,人々が平和に暮らせたのだから,世の中は進歩した」と述べた。子どもたちにそのような江戸時代についての「共通了解」(概念)が構成された。 子どもたちは「パワハラ」「罰が当たる」「上から目線」など,生活で実感をもって使用している概念で「主体的」に事象を捉えている。そこから「対話」を通じて,戦国時代や江戸時代についての自分たちなりに納得のできる理解を「共通了解」(概念)として構成している。だから,その後の学習活動における見方・考え方として機能させて,学びを「深め」ることができるのである。「共通了解」の構成としての社会科学習早稲田大学教授 藤井 千春藤井 千春(ふじい ちはる)博士(教育学) 専門分野/教育哲学,教育思想主要著書/『問題解決学習の授業原理』(明治図書),『問題解決学習入門』(学芸みらい社),『校長の哲学』(学事出版)日本文教出版『小学社会』『わたしとせいかつ』教科書著者社会科NAVI 2020 v ol.24 3