ブックタイトル社会科NAVI Vol.25 『中学社会』教科書特集号

ページ
14/44

このページは 社会科NAVI Vol.25 『中学社会』教科書特集号 の電子ブックに掲載されている14ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

社会科NAVI Vol.25 『中学社会』教科書特集号

中尾この教科書には,歴史を楽しくまた深く学ぶための工夫が,いくつもなされています。 まず,資料を読み取る楽しさを味わいながら時代像を具体的にイメージできるように,図版を大きく豊富に掲載してあります。なかでも特筆されるのは,P.106-109 の観音開きの大型図版です。 P.106-107 には,400 年前の江戸日本橋界隈の屏風絵が,実物大で掲載されています。おかげで,建物や人物の様子が手に取るように観察できます。読み取り課題として,町の区割りの形,各所の木戸や高札中尾1 つは,歴史の授業の最後に,よりよい未来の構想を促すような課題学習に取り組ませることでしょう。 この教科書の巻末には,「『歴史との対話』を未来に活かす」と題して,現代の諸課題への取り組みに活用できるテーマ別のさくいんが,続いて災害,政治参加,世界平和について考える課題学習が設けられています。培ってきた資質・能力を発揮させるのに格好の材料となるでしょう。 地域や先人の知恵に学ぶことは,歴史を現代の眼から捉え,その学びを日々の生活に活かすうえで有意義なことです。P.144 の山形県鶴岡市「致道博物中尾この教科書は,新学習指導要領の趣旨のもと,生徒自身が進んで考え,歴史の全体像を深く理解する学習の実現を願って編集されました。その工夫は,各ページや各編の項目構成に表れています。これを十分に理解し活用して,新課程の趣旨にかなう充実した授業を進めていただくことを願ってやみません。課題例 1 災害の歴史に学ぶ「歴史との対話」を未来に活かす日本列島で起きた災害干かん害がい対策防火対策地震津つ波なみ対策と災害の記き憶おくの継けい承しょう被ひ災民対策洪こう水ずい対策資料1ききん対たい策さく資料2資料3 資料6資料4 資料7資料5 過去に日本列島で起きた災害を正確に把は握あくすることはたいへん困こん難なんなことですが,死者が1000人をこえる大規き模ぼ災害の発生回数を読み取り,過去の災害のおおまかな傾けい向こうを見てみましょう。18世紀の享きょう保ほうのききんで,人々がうえに苦しむのを見た青あお木き昆こん陽ようは,『蕃ばん薯しょ考こう』を書き,琉りゅう球きゅうから薩さつ摩まに伝わっていたさつまいもに着目して普ふ及きゅうを訴うったえました。 江え戸ど幕ばく府ふの8代将しょう軍ぐん徳とく川がわ吉よし宗むねが,この本と種たね芋いもを諸しょ国こくに配ると,やせた土地でも育つさつまいの栽培が広がりました。大おお阪さか狭さ山やま市の狭山池は,1400年前の飛あすか鳥時代につくられました。以後,行ぎょう基きや朝ちょう廷ていが貯水量を増やす工事を重ね,周辺の農地の水不足を解消し農業を支えてきました。江戸時代,江戸の大半を焼失させる大火が,10回以上も発生しました。木造家屋が密みっ集しゅうして建ちならぶ都市では,火災は,最も身近でおそろしい災害でした。 1718年,それまで中心であった武士の消防組織に加え,町人の消防隊である町火消が設置されました。費用は町人が負ふ担たんし,江戸全体で約1万人いたと伝えられています。岩いわ手て県宮みや古こ市の姉あね吉よしに「高き住居は児じ孫そんの和楽 想へ( え)惨さん禍かの大津つ浪なみ 此こ処こより下に家を建てるな」と刻きざんだ石碑があります。この石碑は,1933(昭和8)年の昭しょう和わ三さん陸りく地震津波の後,海かい抜ばつ50mのところに建てられました。姉吉地区は,このときの津波と,1896(明治29)年の二度にわたって地震と津波におそわれ,生せい存ぞんした住民がそれぞれ4人と2人という壊かい滅めつ的な被害を受けていました。石碑を建てて以い降こう,石碑より低い場所に住む人はなく,東日本大震災のときも海抜40.5mのところまで津波が押おしよせましたが,民家はこの石碑より高いところにあり,住民は無事でした。 こうした石碑は,全国各地に建てられています。過去の災害の記録と記憶をとどめ,未来に向けた防災の糧かてとすべく,データベース化して広く公開する取り組みも進んでいます。江戸時代,幕府をはじめ寺社や個人によって建てられ,被災民を収しゅう容ようして食料をあたえました。自分の力で領国を治めた戦国大名は,領民の生活を守るとともに,安定した年ねん貢ぐの確保をめざして,農業などを盛さかんにし,治水事業に力をそそぎました。青木昆陽『甘かん藷しょ記き』(国立国会図書館蔵) 『蕃薯考』を庶しょ民みん向けにわかりやすく書いたのが『甘藷記』です。天てん保ぽうのききんで蘭らん学がく者の渡わた辺なべ崋か山ざんらが京きょう都とに設置した救すくい小ご屋や(荒こう歳さい流りゅう民みん救きゅう恤じゅつ図ず 東京都 国立国会図書館蔵)町火消(東とう京きょう都江戸東京博物館蔵)岩手県姉吉の大津浪記念碑信しん玄げん堤つつみ(山やま梨なし県甲か斐い市) 甲か斐いの国くに(山梨県)を治めた戦国大名の武たけ田だ信玄が,16世紀なかばに築いた堤防で,今に残されています。死者1000人以上(推すい定てい)の大規き模ぼ災害(河かわ田た惠よし昭あき作成資料,2018年現在)かんがい設備国立民族学博物館のウェブサイト「津波の記憶を刻む文化遺産-寺社・石碑データベース」学習 課題災害に強い社会の実現をめざし,防災・減災に関するそなえを過去から学びましょう。ステップ1 日本列島では,いつ,どのような災害が起こっていたのでしょうか。資料1 から,どの時代にどのような災害が多かったのか読み取りましょう。ステップ2 先人たちは災害にどのように向き合い,生きぬいてきたのでしょうか。資料2?7 のほか,テーマ別さくいん「ききん・災害・疫えき病びょう」( P.299)も活用して,どのような人々がどのように対たい処しょしてきたのか,整理しましょう。また,身近な地ち域いきに似たような事例がないか,調べましょう。ステップ3資料2?7 にある先人たちの取り組みが現代に引きつがれていないか,考えてみましょう。先人の取り組みをふまえ,現代も継けい承しょう・発はっ展てんすべきことは何でしょうか。自分の考えをまとめましょう。公民的分野の学習に向けて現在の国や地方公共団体の災害に対する取り組みを学びましょう。政治単元環かん境きょう問題や自然災害に対する国際協力の重要性が高まるなか,日本の国際社会への貢こう献けんや果たしている役やく割わりを学びましょう。国際単元救小屋治水事業さつまいもの栽さい培ばい地震津波碑ひ町まち火び消けし 2011(平成23)年3月11日に発生した東日本大震しん災さいの発生以い 降こう,過去の災害について学ぼうとする取り組みが,広く行われるようになりました。 文字による記録だけでなく,遺い 跡せきの発はっ掘くつ調査などの成果を組み合わせて,過去の災害の被ひ害がいの実態や復興の過程を明らかにしようとする研究が進んでいます。今後のそなえを検けん討とうしていく際の大切な情報の一つに位置づけているのです。東日本大震災発生回数火山噴火つなみ津波じしん   地震たかしお高潮こうずい洪水600年1000年1400年1800年1900年1950年2000年32220合計99回古代中世近世近代現代3024ふんか300 301第4 編 近世の日本と世界18 酒井館長庄内藩の藩校致道館(上)と20 致道博物館に保存されている明治時代に建てられた旧西にし田た川がわ郡役所(下)19館長の酒さか井いさんの話 城下町鶴岡の致道博物館は鶴ヶ岡城じょう三の丸にあります。庄しょう内ない藩は徳とく川がわ四天王の一人である酒さか井い忠ただ次つぐを祖とし,3代忠ただ勝かつが1622年に鶴岡へ入り,以来酒井家が治めました。博物館は,1950(昭和25)年,16代忠ただ良ながが郷きょう土ど文化向上のため,旧藩校致道館の資料および土地建物を寄付して発足しました。そして,貴き重ちょうな建物保存や美術・歴史・民俗・考古資料など多分野にわたって発信しています。博物館名は,藩校名にちなみ,論ろん語ごの「君くん子し学んで以もってその道を致いたす」が出典で,致道館精神「人は大たい宝ほう」を受けついでいます。致ち道どう博物館(山やま形がた県鶴つる岡おか市)関せき孝たか和かずの著ちょ作さく(『括かつ要よう算さん法ぽう』 東京都 国立国会図書館蔵) 円周率の計算について解説している部分です。16『農業全書』(国立国会図書館蔵)17144歴史教科書P.142 江戸時代前期の文化と学問歴史教科書P.106-107 第4 編 導入ページ歴史教科書P.144 【地域に学ぶ】致道博物館歴史教科書P.300-301 「『歴史との対話』を未来に活かす」■ 文化史をはじめ大判の図版が多く,詳しい読み取りが楽しめる■ P.106-109には観音開きの大型図版も!■【 デジタルマーク 】で知識を深めるウェブページにアクセスできる大きな図版での読み取りやウェブで学びを広げられますA4■ 巻末の「『歴史との対話』を未来に活かす」のテーマ別さくいんや課題例を授業の材料に■ 特設ページの「歴史を掘り下げる」や「でかけよう! 地域調べ」を活かす地域や先人の知恵に学び,よりよい未来の構想を促す課題学習に取り組ませましょうA5歴史を楽しく深く学ぶためにどんな工夫をしていますか。Q4歴史学習を現代の諸課題の解決に活かすにはどのような授業をすればよいのでしょうか。Q5最後に,この教科書を使う生徒や先生方へのメッセージをお願いします。Q6芸能文芸松まつ尾お芭ば蕉しょう(1644~1694)(天てん理り 大学附ふ 属ぞく天理図書館蔵)4江戸時代の人々の楽しみはどのようなものだったのかな。芭蕉がよんだ句と6 その舞ぶ台たいの平ひら泉いずみ52 現在も演じられる近ちか松まつ門もん左ざ衛え門もん作の人形浄じょう瑠る璃り文ぶん楽らく夏草や 兵つわものどもが 夢の跡あと五さ月み雨だれの 降りのこしてや 光ひかり堂ど う(『奥おくの細ほ そ道みち』歌か舞ぶ伎き(浮うき絵え 劇げき場じょう図 東とう京きょう都 平ひら木き浮世絵美術館蔵) 手前の左手の花道に立つのが市いち川かわ団だん十じゅう郎ろうです。 資料活用歌舞伎を楽しんでいるのはどのような人たちか,観客の身分や性別に注目して読み取りましょう。1館」は,藩校以来の地域の伝統の発信拠点です。 このほか,特設ページの「歴史を掘り下げる」は,日本の神話や五輪の歴史,文化財の保存修理の仕事などを詳しく取り上げています。同じく「でかけよう! 地域調べ」は,地域の歴史の調べ方・学び方を紹介しているコーナーです。第4 編 近世の日本と世界実物大第 4 編 近世の日本と世界A B C106インド半島アラビア半島0°たい  へい  よう太 平 洋たい  へい  よう太 平 洋わんペルシア湾ちちゅうかいたい  せい  よう大 西 洋地中海イ ン ド 洋陸上ルート海上ルート主な貿易ルート21年度版中学校歴史R400_02_0315世紀の世界地図・町は,どのような形に区く割わりされているかな。・ 橋のたもとにある木戸D2 は,何の役やく割わりがあるのかな。・E3 にある白い壁かべの窓まどをとじた建物は何かな。・ B1 にある高こう札さつは,だれにどのようなことを知らせるものかな。400年前の江え戸どの町を読み取ろう1 江戸図屏びょう風ぶの日に本ほん橋ばし付近のようす(実物大)(江戸図屏風 千ち葉ば県 国立歴史民みん俗ぞく博物館蔵)?1・ 武士と町人,男性と女性のどちらが多いかな。・荷物の運うん搬ぱんに,何が使われているかな。・川岸には,何が積まれているかな。・ 店や天てん秤びん棒ぼうで何が売られているかな。次は,中世の京きょう都とと近世の江戸を見比べましょう。第4 編 近世の日本と世界地図で見る世界の動き15世紀の世界と日本 スペインやポルトガルでは,キリスト教徒がイスラム教徒(ムスリム)を追い出す一方で,イスラム世界では,オスマン帝てい国こくが東ローマ(ビザンツ)帝国をほろぼして,勢力を拡かく大だいしつつありました。中国では,元にかわって漢民族の明みんが中国全土を支配しました。 ヨーロッパ人はアジアの産物にあこがれましたが,その欲求をみたしたのがムスリムの商人でした。季節風を利用して遠えん隔かく地ちへ航海し,アジアへの航路を発見した彼らは,絹きぬや香こう辛しん料りょうなどを手に入れ,ヨーロッパへもたらしました。ムスリム商人の活かつ躍やく第4章「近世の日本と世界」の動きアステカ王おう国こくインカ帝てい国こくマチュピチュ? 地図を読み取ろうP.82の地図と比べて,ユーラシア大陸の国はどのように変化しているのかな。中国やヨーロッパ,そのあいだにあるイスラム世界に注目して読み取りましょう。1400年1500年1600年1700年1800年明清朝鮮室町時代 安土桃山江戸時代戦国時代 時代鉄砲が伝わるキリスト教が伝わる秀吉の全国統一江戸幕府の成立鎖国徳川家光近松門左衛門本居宣長杉田玄白伊能忠敬歌川広重ザビエル織田信長豊臣秀吉徳川家康新田開発が盛んになる享保の改革田沼の政治百姓一揆が増える寛政の改革蘭学・国学が盛んになる西まわり航路が開かれるコロンブスがアメリカ到達ルターの宗教改革清がおこる主なできごと(細字は第3編で学んだ内容)年代時代朝鮮中国小学校で学んだ 主な人物南北朝時代室町幕府の成立(南北朝の内乱)南北朝の合一朝鮮建国勘合貿易土一揆応仁の乱山城国一揆琉球の統一木戸木戸木戸D E F4321107 110の役割,武士と町人,男性と女性の比率などへの着目が促されます。 この両内側のページには,中世の京都室町と近世江戸の様子が,左右に実質4 ページ分で大きく掲げられています。例えば室町幕府と江戸幕府の将軍の居所である建物を比べてみると,両時代の政治権力のちがいに目を向けることができます。 同様に,P.80 の一遍上人の踊念仏やP.142 の歌舞伎の様子など,文化史の関係は大判の図版が多く,詳しい読み取りを楽しく進めることができます。 このほか,【デジタルマーク 】は,同社のウェブページ情報の案内です。 P.149 の「天地返し」が,わかりやすいコマ画で紹介されたりしています。14 社会科NAVI 2020 v ol.25 社会科NAVI 2020 v ol.25 15