ブックタイトル社会科NAVI Vol.25 『中学社会』教科書特集号

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概要

社会科NAVI Vol.25 『中学社会』教科書特集号

橋本まず,新学習指導要領の中学社会公民的分野は,全体の構成は大きくは変わっていません。その理由は,新しい学習指導要領が目指す「基礎的な知識」を「習得」「活用」し,現代社会の課題を解決する学習については,平成20 年版の学習指導要領で対応済み3 3 3 3だからです。すなわち,平成20 年版では,「基礎的な知識」として,「現代社会を捉える見方・考え方」を位置づけ,その内容を「対立と合意,効率と公正」としました。また,これらの「基礎的な知識」を「習得」「活用」する学習場面も想定したのです。現行の日本文教出版の教科書では,消費税の増税問題等を「課題」生まれ変わった   教科書は授業でどう使う?福井大学教授 橋はし本もと康やす弘ひろ専門は社会科教育学,公民教育,法教育。高等学校教諭,兵庫教育大学助手などを経て現職。元文部科学省教科調査官。平成29年告示学習指導要領の改訂にも関わる。日本文教出版『中学社会』教科書著者として位置づけ,「公正」等を「活用」して「課題」の解決の在り方を考える紙面構成になっています。ただ,新しい学習指導要領では,これらの「基礎的な知識」だけに止まらず,その内容を充実することになりました。これまでの「対立と合意,効率と公正」のように,公民的分野全体を貫く「見方・考え方」の他に,経済単元において「分業と交換,希少性」,憲法・政治単元において「個人の尊重と法の支配,民主主義」,国際単元において「協調,持続可能性」が新たに「見方・考え方」として位置づけられたのです(図1)。■ 経済,憲法・政治,国際の各単元に新たな「見方・考え方」が位置付けられた■ 見方・考え方を活用した「主体的・対話的で深い学び」の重視■ 18才選挙権に伴う主権者教育の充実や社会参画意識の醸成の重視■ 持続可能な社会の形成に向けた意識の醸成の重視現行学習指導要領が目指した内容の充実A1橋本康弘先生に聞きました図1 新学習指導要領における公民的分野の全体構造習得・活用探究(2)よりよい社会を目指して私たちと D現代社会A地理的分野歴史的私たちと 分野国際社会の諸課題D協調,持続可能性など(1)世界平和と人類の福祉の増大私たちと経済B分業と交換,希少性など私たちと政治C個人の尊重と法の支配,民主主義など現代社会を捉える枠組み:対立と合意,効率と公正など公民公民的分野の学習指導要領の改訂のポイントを教えてください。Q1「見方・考え方」を常に意識して授業を行っていく必要がある橋本Q1 の質問でもお答えしましたが,新しい学習指導要領では,「基礎的な知識」としての「見方・考え方」を「習得」し,現代社会の課題の解決の在り方を探る学習において,「見方・考え方」を「活用」する学習が想定されています。新しい学習指導要領では,「見方・考え方」を重視しているということになります。教師にとってみれば,その「見方・考え方」を常に意識して授業を行っていく必要があると同時に,生徒にとってみれば,「見方・考え方」を常に意識して授 新しい学習指導要領では,「主体的・対話的で深い学び」が重視されました。これまで通り,「見方・考え方」を「活用」して現代社会の課題を解決する学習場面等において,「主体的・対話的で深い学び」の実現が求められます。公民的分野は,受験を控えた中学3 年生で学習が行われる特性もあり,複数の授業時間を要する現代社会の課題を解決する学習がしづらい状況にあります。こういった学習は,憲法・政治や経済,国際単元で各1 テーマ程取り上げ授業を実施するとともに,レポート作成の学習(日本文教出版の教科書では第5 編)において実施すると考え,日々の学習課題を解決する学習においては,比較的取り組みやすい「ペア・トーク」(二人一組で意見交換を行う)等を取り入れることで,「主体的・対話的」な学習場面を取り入れて頂ければと思います。 新しい学習指導要領では,他に,18 才選挙権に伴う主権者教育の充実や社会参画意識の醸成が重視されました。ある国際比較調査においては,日本の中学生は,「社会のことはとても複雑で,私が関与したくない」と考える者が,53.6%に上るのに対して,米国は27.3%,中国は22.2%の数字が出ています。他の調査項目でも,日本の中学生の社会参画意識が低い数字が示されています。そこで,「国や社会の問題を自分たちの問題として捉え,行動していく主権者」を育成する主権者教育の充実が図られました。 また,2015 年9 月に国連によって「持続可能な開発目標」(SDGs)が採択されました。国連における決定を経て,「持続可能な社会の形成」は国際目標になってきています。その「目標」は,「貧困をなくそう」(ゴール1),「気候変動に具体的な対策を」(ゴール13)といったような内容です。これらの内容だと,国際単元の場面で取り上げるものといった意識になりがちですが,他に「ジェンダー平等を実現しよう」(ゴール5)に見られるように,国内での3 3 3 3政治や経済学習とも関連付けられる内容があります。新しい学習指導要領においても,「持続可能な社会の形成に向けた意識の醸成」が重視されており,日本に在住する市民もその実現に寄与していく必要があります。日文の教科書著者■ 新学習指導要領では,基礎的な知識としての「見方・考え方」を習得し,活用する学習が想定されている■ 新しい日文の教科書では,「学習の始めに」や「見方・考え方コーナー」などで見方・考え方の習得が,「深めよう」などの問いで見方・考え方を働かせることが意図されている「見方・考え方」を常に意識A2Q2新しい日文の公民教科書では,「現代社会の見方・考え方」が学習課題の下に例示されています。授業ではどのように使えばよいのでしょうか。16 社会科NAVI 2020 v ol.25 社会科NAVI 2020 v ol.25 17