ブックタイトル社会科navi Vol.8
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社会科navi Vol.8
生活の国際手帳【第2回】新興国の台頭と国際秩序の変化?神戸大学教授栗栖薫子エネルギーや鉱物資源の獲得のために,中国やインドがアフリカ大陸に進出し,活発な資源外交を繰り広げている様子を,メディアを通して目にします。こうした動きは,グローバル化の中で新しく力をつけた国(新興大国)が打ち出す政策への関心をいやおうなく高めています。今回は,新興大国が国際政治の舞台に浮上することによって,どのような変化がもたらされるのか,特に国際秩序との関係から検討してみたいと思います。新興大国の台頭と国際的な力の構造の変化ゴールドマン・サックスの報告書(2003年)は,来る50年間にブラジル,ロシア,インド,中国(BRICs)の経済的な躍進と,主要経済国の入れ替わりを予測しました。他方で,アメリカが世界秩序を管理する能力は,21世紀に入ってから急速に落ちています。これらはどのような政治的な波及効果を生み出すのでしょうか。言い換えると,世界の複数の大国の間で相対的なパワー(国力)の構造が変化しつつあるといえますが,これをパワー・シフトと言います。国力を経済,軍事,技術など総合的に評価すればアメリカの力は現在も圧倒的ですが,様々なデータは経済発展を続ける中国やインドを中心にパワー・シフトが進行中であることを示しています。さらに長期的には世界における主導国(覇権国)の交代(パワー・トランジション)の可能性も論じられています。これから数十年間には世界規模で大きなパワー・シフトが予測され,その「乱気流」ともいえるプロセスをいかに平和に乗り切るのかが国際政治上の大きな課題となっています。国際政治におけるパワー・シフトと戦争これまでの歴史をみると,国際政治の主導国が自由貿易や海洋の安全などの秩序を提供し,そのもとで経済発展をとげた新興大国が,主導国に対する挑戦国となり,その際には大規模な戦争が発生してきたという考え方があります。たとえば,第一次世界大戦は,イギリスの下での秩序に対するドイツの挑戦と失敗であったというものです。このような観点からみたとき,アジア太平洋地域はまさに今世紀になってからの経済発展の中心であり,アメリカ中心の国際秩序からのパワー・シフトの核となっているといえます。長期的な将来に,新興大国とアメリカとの相対的な力関係が逆転するのだとすれば,その移行が戦争を引き起こさないように知恵を絞っていく必要があります。とくに,そのような新興大国が,現存の国際的な原則やルールに対して不満を持って,国際秩序への「挑戦国」とならないように,いかに国際的な枠組みづくりに取り込んでいくかが問われます。平和学者のヨハン・ガルトゥングは,社会において個人や集団に与えられた地位が,実際の力に見合わない場合に,紛争が発生しやすいと論じました。国際政治でも同様に,国際社会における地位と実際の国力の間にギャップが生じ,新しく力をつけた大国が不満をもつことが戦争の要因となるという指摘があります。パワー・シフトとグローバル・ガヴァナンスパワー・シフトは,グローバルな秩序の管理22