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概要

社会科navi Vol.8

表PISA 2015のための協働的問題解決のマトリクスコンピテンシープロセス(1)共有の理解を確立し維持する。(2)問題解決のために適切に行動する。(3)チームの組織を確立し維持する。(A)探究と理解(A1)チームの個々のメンバーの見(A2)目標に向けて問題を解決する(A3)問題解決のための役割を理解方・考え方や能力を発見する。ための協働的相互作用のタイプ(型)を発見する。する。(B)表現と明確化(B1)共有の表現を作り,問題の意味(共通の基盤)を協議する。(C)計画と遂行(D)モニタリングと振り返り(C1)遂行すべき行動についてチーム(C2)プランを実行する。のメンバーと話し合う。(D1)共有された理解をモニターし,修正する。(B2)成し遂げるべき課題を確定し記(B3)役割とチームの組織(コミュニ述する。ケーションの取り決め/関わりの役割)を記述する。(C3)関わりのルールをフォローする(例えばチームのメンバーが各自の課題を遂行するのを促す)。(D2)行為の結果をモニターし,問題(D3)チームの組織と役割をモニターし,解決における成果を評価する。フィードバックし,受け入れる。3)OECD(2013)「PISA 2015における協働的問題解決の枠組みについて(草稿)」OECDPISAは次の2015年調査において,従来の「科学リテラシー」「数学リテラシー」「読解力」に加えて「協働的問題解決(Collaborative Problem Solving)」(以下,「CPS」と略す)の調査を予定し,その草稿(ドラフト)を発表した。この草稿は,前述した社会的スキルとしての「異質な集団での交渉力」を考える上できわめて示唆に富む。草稿は,コンピテンシーとプロセスを軸に表のようにCPSのマトリクスを構成する。生徒たちには,このマトリクスに従ったストーリー性のある課題と,課題の文脈に関連した問い(例えばC1「あなたはBさんからどのような情報を得たいですか」,B2「Bさんは次に何をするでしょうか」など)が与えられる。草稿は,次の二つの問題を例示している。1水族館問題「学校の受付に水槽を設置するにはどんな水槽がよいか」という課題が与えられ,コンピュータ画面上に現れるもう1人の級友と対話を進めつつ,水温の高低や魚の数の多寡等の条件について協働して試行錯誤しながら最善の条件を見つけ出すというもの。2学級ロゴ問題「スポーツ大会の表彰メダルにはどのようなロゴがふさわしいか」という課題が与えられ,コンピュータ画面上に現れる2人の級友の提案について,時々に行われるクラス全員の投票において最高の評価(五つ星)が得られるように,色や形を3人で協議しながら改良していくというもの。これらに対しては,PISAが行おうとしているのはあくまでも協働的な問題解決の文脈における個人の評価に止まっている,あるいは水族館問題や学級ロゴ問題における「問題」と社会科における問題は質的に異なっており,社会科が育成しようとする市民的資質とその評価にまでこれらは到達していないという批判が生まれよう。しかし,PISAが知識の活用について評価しようとするとき,単なる個人的な知識の活用ではなく,集団的な活用までをも視野に入れていること,そしてそれは2)に紹介した文部科学省の言う「他者と協力しながら,新しい価値を創造する力」とも十分に通底するものであることは明らかである。さらに述べるなら,社会科が民主主義社会を構成する市民としての資質の育成をめざすとき,そこでの知識やスキルやコンピテンシーは個人の知恵に止まるのか,それとも共同体としての“協働知”のようなものにまで拡張されるべきものなのかについても,今後大いに議論される必要があるだろう。その際,1)に紹介したCERIの指摘,すなわち「シティズンシップの学習が生じるのは知識が状況に埋め込まれている」時であることは十分に肝に銘じておきたい。また,これらの問いに答えるためにも,PISA 2015に対応する具体的な社会科の問題が開発されることを期待したい。〈文献〉OECD(2013)PISA 2015 Draft Collaborative ProblemSolving Framework,OECD著者紹介水山光春(みずやまみつはる)専門分野/社会科教育,環境教育主要著書/『やわらかアカデミズムよくわかる環境教育』(編著,ミネルヴァ書房,2013年),『生活科・総合的学習の理論と実践』(共著,東京教学社,2013年)他日本文教出版『中学社会地理的分野』教科書著者3