ブックタイトル社会科navi Vol.8
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社会科navi Vol.8
特集これからの社会科教育にのぞむもの見方や考え方の指導の充実により,優れた有権者(主権者)の育成を岡山大学教授桑原敏典1.はじめに本稿では,社会の仕組みを知り主権者としてより間違いの少ない判断ができる市民を育成するために,小学校社会科においても社会を捉える枠組みとしての概念や理論,すなわち,見方や考え方の指導を一層充実させるべきであることを主張していく。ここでは,筆者らの研究グループが昨年度まで取り組んでいた有権者教育プロジェクトの成果に言及しつつ論じていきたい。2.有権者教育プロジェクトとその成果中学校社会科では,現代社会をとらえる見方や考え方として,「対立と合意,効率と公正」という4つの概念を身につけることが求められている。さらに,高等学校公民科の「現代社会」においても,「幸福,正義,公正」が社会の在り方を捉えるための枠組みとして示された。従来,見方や考え方の指導の充実が求められながら,そのねらいが達成できていなかった社会科(地歴科,公民科)において,見方や考え方が具体的に示された意義は大きい。しかし,このような見方や考え方は,数時間の授業のみで身に付くものではない。社会科の学習で繰り返し取り上げられ,徐々に身に付いていくものであろう。したがって,小学校から系統的に見方や考え方を育成し,中学校へ接続するという発想が求められる。それによって,小中高一貫の見方考え方の育成が可能となろう。筆者らの有権者教育プロジェクトにおいては,従来の教育プログラム開発研究が理念先行で実証的でなかったことを反省し,実証的なデータに基づいて新しい教育理論を主張していくことを目指した。そのために取り組んだのが,児童の認識変容調査である。これは,政治的な判断のために必要とされる概念について児童の認識を調査し,教育的な刺激によってそれをどの程度成長させることができるかを明らかにしようとしたものである。調査の対象としたのは,第4学年の児童である。第4学年に注目したのは,発達心理学の成果をふまえると,この時期を過ぎると徐々に抽象的な思考が可能になると考えられたからである。我々は,まず,「税金」という概念を取り上げて,調査を行った。「税金」に着目したのは,「税金」は公共的な事柄にどのように資源を配分していくかという政治の目的に関わる概念であり,その目的のための意見の調整という政治の働きや公正さの確保という政治の要件の理解につながるからである。調査は,?事前テスト(税金の定義,種類,目的等についての質問)→?課題(共同で使用する物品を購入するための負担の配分に関する問題)→?事後テストという手順で行った。?の課題は,皆で使用していたサッカーのゴールの修理代金をどのようにして工面するかという問題を解決するというものである。誰が,どのように負担すればよいか,それをどのようにして決定すべきかを児童一人ひとりに考えさせた。この課題は,ゴールの修理(公共的な事柄)のための資金(財政)を,誰がどのように負担するか(税金)を考えさせるもので,税金の概念の理解につながっていく。この課題に取り組ませる前後で,税金に対する認識がどのように変化したかを事前事後のテストを比較し明らかにしていった。比較をするうえでの基準は,税金をその意味を理解せず単にシンボルとして捉えている段階(ステージ4