ブックタイトル社会科navi Vol.8
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社会科navi Vol.8
り,5人に2人が高齢者になるとの予測が出ている2)。このような高齢社会が到来すると,日本の就業人口の確保といった観点等から,諸外国からの移民を日本は積極的に受け入れていくことで,社会の維持・発展に努めなくてはならなくなる。「郷に入れば郷に従え」でやっていくのであれば問題はないが,例えば,夜遅くまでパーティーをB自立的に活動するA異質な集団で交流する思慮深さC相互作用的に道具を用いるa他者とうまく関わるb協働するc紛争を処理し,解決する行うといった「習慣」をそのまま持ち込まれれば,紛争が生じかねない。そういった紛争を法的なものの考え方で解決する,そういった能力をこれからの市民は身に付けておかなければならない。そabc大きな展望の中で活動する人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する自らの権利,利害,限界やニーズを表明するabc言語,シンボル,テキストを相互的に用いる知識や情報を相互作用的に用いる技術を相互作用的に用いるのようなコミュニティの問題に限らず,価値多元図1キー・コンピテンシーとは(筆者作成)化した日本社会では,政策決定においても,何が「公正」で何が「正義」に適った政策なのかについて,多様な見解を踏まえ,考察し,判断する能力が必要になる。こういった能力の育成にも「法的なものさし」を提供する法教育は,教育的意義を持つだろう。ちなみに,アメリカ合衆国で法関連教育が重視されたのは,続々流入する中南米系の移民を「アメリカ市民」にするためであった。アメリカ合衆国では,移民を「アメリカ市民」として教育するために,アメリカ合衆国が重視する「正義」「公正」といった法的価値に関する教育を行うことで,「アメリカ市民」として育てていった。時代は違3.次期学習指導要領の改訂に向けて次期学習指導要領の改訂が,「21世紀型能力」の育成を目指すコンピテンシーを基盤としたカリキュラムを志向する限りは,また,市民性育成を重視する限りにおいては,法教育は引き続き充実が図られることになるだろう。具体的に,社会科では,どのような教育を行うべきなのか,今回の改訂学習指導要領における実践状況・実践上の課題を踏まえながら,その内容について検討を加えていくべき時期にさしかかっている。えど,これからの日本と当時のアメリカ合衆国は法教育を必要とする点で相通じているのである。(2)キー・コンピテンシー教育の柱としての法教育最近,国立教育政策研究所は,今後求められる資質・能力として「21世紀型能力」3)を提示している。その「21世紀型能力」と親和性があるものに「キー・コンピテンシー」がある。「キー・コンピテンシー」は,OECDが示す能力観であり,次の図1のように示すことが出来る。この図の内,「紛争を処理し,解決する」「自らの権利,利害,限界やニーズを表明する」などの能力は,法教育のみで育成可能な「オンリーワン」の能力であり,グローバル化した社会で育成すべき能力と位置づけることが出来るだろう。【註】1)法務省法教育研究会『はじめての法教育』(ぎょうせい,2005年,p.2)2)国立社会保障・人口問題研究所,日本の将来推計人口(2012年1月,中位推計)http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/newest04/gh2401.pdf3)「21世紀型能力」の具体については,三宅なほみ監訳『21世紀型スキル:学びと評価の新たなかたち』(北大路書房,2014年)が詳しい。著者紹介橋本康弘(はしもとやすひろ)専門分野/社会科教育学,公民教育,法教育主要著書/いずれも編著『教室が白熱する“身近な問題の法学習”15選』(明治図書,2009年),『中学社会をよりよく理解する。』(日本文教出版,2008年),『“法”を教える』(明治図書,2006年)他多数7