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概要

社会科navi Vol.8

特集これからの社会科教育にのぞむもの見方考え方の成長を意識した社会科授業づくりの視点立命館大学准教授角田将士1.子どもたちの学びの「履歴」や「発展」を意識した授業づくり近年,「小中連携」の動きなど,既存の校種を柔軟に捉えた教育のあり方が模索されている。一方で,このような制度的な検討とともに,授業づくりのレベルにおいても,校種を超えた「連携」を意識することが求められる。子どもたちは授業以前には「学びの履歴」を有しているし,授業後も「学び続ける」のだから,自分が担当している学年やそれぞれの校種の教育のみに意識を集中するのではなく,前後の関連性にも目を配ることも極めて重要な視点である。社会科授業においては,単なる知識の伝達に留まるのではなく,下図1)に示すように,社会的事象の本質や,事象どうしの関連性を読み解いていくためのレンズとも言うべき「見方考え方」を形成していくことが求められる。小学校においてはその学習が「どのような見方考え方につながっていくのか」を特に意識する必要があるだろうし,中学校においてはそれまでに形成されてきた見方考え方を「より成長させるためにはどうしたらよいのか」を特に意識する必要があろう。人は既有の見方考え方では説明がつかない事実事象B本質関連関連事象A本質関連事象C本質図社会科で育成する見方考え方のイメージレンズ(見方考え方)光源(意欲)に出合った時,疑問や矛盾を感じ,「なぜ?どうして?」という知的好奇心が喚起され,その事実を包摂する形で見方考え方を成長させていくという。これは「知識の変革的成長」2)と呼ばれる。知的好奇心を刺激し,学習意欲を喚起していくためにも,これまでの学びやこれからの学びを意識した授業づくりが重要になってくるのである。2.「学びの発展」を意識した小学校社会科における授業づくり小学校社会科授業の大きな特質は,特に第3~4学年においては,地域で活躍する人たちの「工夫や努力」「願い」に焦点化した社会(地域)研究を行っていく点にある。様々に活躍している人たちの行為やその背後にある願いを共感的に理解することを通して,子どもたちが「自分たちもそうありたい」と思い,「地域社会に対する誇りと愛情」をもち,地域の発展に尽くす人材へと成長していくように促すことが指導の主眼となる。しかし,同じ「工夫や努力」といっても,スーパーマーケットで働く人たちのそれと,浄水場や警察・消防で働いている人たちのそれとでは質が異なっていよう。スーパーマーケットなどの一般企業で働いている人たちの工夫や努力について考えることは,「企業は限られた資源を使って消費者の多様な需要にこたえ,優れた製品を生産するために様々な工夫や努力をしている(小学校第5学年)」といった見方考え方や,「企業は市場において,公正な経済活動を行い,消費者,株主や従業員の利益を増進させる役割を担っている(中学校公民的分野)」といった見方考え方へとつながって8