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学期末の個人面談 -評価説明のポイント- |
園田学園女子大学教授 |
野口克海 |
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●評判のよくない個人面談
どうも私たち教師は、極端から極端へ流される傾向があるようだ。
「評価のあり方が、相対評価から絶対評価に変わった」
というと、
「絶対評価に基づいて、子ども一人ひとりの個性を見つめ、到達目標にどこまで近づいたかを評価し、それを保護者に説明するのが学期末の個人面談のあり方である」
ということになる。
もちろん、これはこれで正しい。ところで相対評価の扱いはと聞くと、
「相対評価は子どもの競争心をあおることになり、よくない。したがって個人面談では話題にするべきではない」
と相対評価を否定してしまう。
保護者の側からすると、
「一方的に、これからは絶対評価ですと言われても、どうして相対評価が悪くなったのか分からない」
「相対評価なしで、入試の時はどうするのか」
などといった不満や疑問がでてくる。
まるで、時計の振り子が右端から左端へ振られるように、これまでの片方を否定してしまう。
●評価が変わった理由
21世紀は個性の時代と言われ、評価のあり方も、これまでのように偏差値という物差しだけで、評価する時代ではなくなった。
もっと、子どもにいろいろな物差しをあてて、多面的に評価することで、子どもの個性を伸ばすことにつなげよう。
そういう議論を踏まえ、指導要録を改訂する教育課程審議会で評価のあり方を変える答申が出された。
簡単に言えば、到達度評価(絶対評価)と個人内評価(記述式で子どもの成長を評価)に重点を置くこととし、これまでの相対評価を後退させることとした。
そのように変えた理由の主なものは次の3点である。
(1)子ども一人ひとりの個性を見つめ、その子の努力の成果を評価するには、到達目標に、それぞれ、どこまで近づいたかを見る絶対評価の方が、相対評価よりも的確であること。
(2)一学期から二学期へと、子どもの成長の過程を見るには相対評価よりも到達度評価(絶対評価)の方が、ふさわしいこと。
(3)少子化が進み、学校の小規模化が進行する中で、一学年一学級とか、一クラス10数人というような学校が増えてきており、相対評価の信頼性や的確性が確保されなくなってきていること。
今回の改訂で、偏差値だけでなく、子どもをこれまで以上に多面的に評価していこうという方向が示されたことは、よいことだと考えている。
しかし、絶対評価にも弱点がある。
それは、到達目標や基準の設定が、学校によって、教える者によってあいまいになりやすいことである。
誤解を恐れずに言えば、これまでの相対評価を悪者扱いしたのではないということもおさえておきたい。
教育課程審議会の答申にも、
「子どもの発達段階を考慮しながら、子どもの励みになるように活用できるならば、全国の学力調査や市町村の学力テストなど、相対評価も使うことが望ましい」
と述べられている。
●評価説明の目的は何か
相対評価、絶対評価や個人内評価など、それぞれの評価方法には、それぞれ長所と短所がある。
絶対に正しい評価方法というのはない。この目的のためには、この評価方法を活用するのが望ましいと考えるのが妥当であろう。
したがって、学期末の個人面談で子どもや保護者に成績表や通知表を示しながら評価の説明をする時も、大切なのは、
「目的は何か」
ということである。
私の答えは、ただひとつ。
「子どもを元気にするため」
である。
通知表をもらった時に、子どもがガックリ肩を落とすなら、そんな通知表は渡さない方がいい。
子どもが、
「先生は、ボクが頑張ったところをちゃんと見てくれている。評価してくれている」
「ヨーシ! 力が湧いてきた!」
保護者も、
「家では分からない学校での子どもの努力している様子がよく分かった」
「どこを励ましてやればよいか、ハッキリした」
そんな、学期末の個人面談であって欲しい。
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