「戦略」「戦術」というと、どうもきな臭く聞こえるが、近頃は、「販売戦略」とか「企業間の戦略提携」「情報戦略」など、日常的にも使われている。
そこで、ある県の教務主任研修(スクール・リーダー養成研修)に招かれた時に聞いてみた。
「学校にも当然、経営戦略とか戦術が必要ですよね。ところで、戦略と戦術とはどう違うのでしょう?」
日頃から、そういう問題意識を持って仕事をしていないせいか、適確な答えは返ってこなかった。
広辞苑によると、
[戦略] 戦術より広範な作戦計画。各種の戦闘を総合し、
戦争を全局的に運用する方法。
[戦術] 戦闘実行上の方策。一個の戦闘における戦闘力の
使用法。一般に戦略に従属。
とある。
[戦略爆撃]という項目を読むと、
直接敵軍に加える爆撃と異なり、敵国の産業破
壊・戦意喪失、交通遮断などを意図する爆撃。
とある。
これは分かりやすい。
豊臣秀吉が小田原城攻めの時に、若い独眼竜政宗をためした。
「そのほう、あの大城を攻むるにはいかんとなす」
二十四歳のいなか大名の政宗は、うろたえることなく、
「これほどの大城なれば、総構えを埋め門塀を乗り崩すは至難の業にござりまする。されば、調略を仕懸け、城内上下の不和を招き、士気を衰えさせるようにいたすがよしと勘考つかまつりまする」
「ほかに手はなきか」
「なしと存じまする」
政宗は秀吉の威をおそれる様子もなく、いいきった。
秀吉はこころよげに笑った。
「おのしゃ年も若きに、なかなか物いいに念が入っておるだわ。よき器量だで」と率直にほめた。
(津本陽 著 「独眼竜政宗」)
刀や槍を振り回して、勇ましく突撃してくれる武士も大切だが、それだけでは、四年分、五年分の兵糧や弾薬を貯えた小田原城のような大城を陥れることはできない。
それが「戦略」である