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さあ、夏休みは終わった! |
園田学園女子大学教授 |
野口克海 |
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●たくさんの涙と笑顔を見た子どもたち
例年だと、夏の感動といえば、甲子園の全国高等学校野球選手権大会が一番にあげられる。
球児たちの一生懸命な姿にいつも心を打たれる。
今年は、優勝旗が初めて津軽海峡を渡った。駒澤大学附属苫小牧高等学校の球児たちは北海道の人たちみんなを元気にした。
優勝候補でなかったチームが、ただひたすら必死になってプレーする姿は、本当にさわやかだった。
それだけに、北海道の人たちは大喜びした。
今年の夏は、さらにアテネオリンピックがあった。
日本選手たちが大活躍をした。
「チョー、気持ちいい!」
と、叫んだ北島康介選手を始めとして、水泳選手たちが頑張った。
柔道も体操も、マラソンも、感動の連続だった。
テレビの画面には、毎日、たくさんの涙と笑顔とがあふれていた。
勝っても負けても、涙があった。
一生懸命に頑張った、さわやかな涙があった。
今年の夏休みのキーワードは、「たくさんの涙と笑顔に出会ったこと、そして“感動”」ではないか。
子どもによって、何に感動したかはいろいろあるに違いない。15歳の最年少で頑張った卓球の愛ちゃんに、「すごいなあ」と、思った子もいる。
「最後に、みんなで最高の演技ができました」
と、涙した銀メダルのシンクロチームに感動した子もいるだろう。
最近の子どもたちに“夢”や“目標”がないとよく言われる。
「将来、何になりたい?」
「別に・・・」
「今、何がしたいの?」
「別に・・・」
何を尋ねても「別に・・・」という言葉がかえってくることが多いという。
「別に・・・」と言う子は、頑張れない。“夢”がないからである。
そんな子どもたちにも、この夏は若い選手たちが“感動”を与えてくれたはずである。
この“感動”を生かさない手はない。
夏休みが終わった今、子どもたち一人ひとりに“涙”と“感動”について、ぜひ考えさせてみたい。
学級の中のたった一人だけでもいい、この夏の“感動”をきっかけにして、“私も頑張ってみよう!”と決意する子が出てきたら、考えさせた値打ちがある。
●夏休み明けに子どもは変わる
夏休みが明けて、久しぶりに子どもたちと再会すると、
「あれ?この子はずいぶん大きくなったなあ」とか、「急に大人っぽくなったような気がする」
と、思うことがよくある。
子どもの成長や変化は早い。良い方向での成長や変化ばかりとは限らない。
生活のリズムが乱れ、学校生活に適合しにくくなっている子もいる。
夏休み中の何かがきっかけとなって、友達関係がうまくいかず、孤立した状態になっている子もいる。
身体にも、心にも変化が生じている子も多い。
せっかくうまくまとまっていたクラスが、9月のスタートと共にどうもまとまりがなくなってしまったというケースもよくある。
夏休み明けには、必ず子どもたち一人ひとりの様子をもう一度注意深く見つめ直すことが必要である。
子どもの変化に気づき、気にかかる子どもには、じっくりと話を聞いてやるなり、家庭と連絡をとり保護者と情報を交換することも、この時期だからこそ求められる。
学級づくりをもう一度、スタートからやり直すぐらいの気持ちを担任の教員はもってほしい。
「夏休み気分を切りかえて、いいスタートを切ろう」という言葉は、子どもたちにではなくて、まず、教員一人ひとりが、かみしめなければならない。
●秋は実りの季節
一年間を通じて、秋は勉強もスポーツも、学校行事も一番充実して行われる季節である。
教育改革のさまざまな課題も、2002年から3年目を迎えて今年で実を結ばせる時期でもある。
「さあ、夏休みは終わった!」
「新しい出発!」
そんな気持ちで9月をスタートしたい。
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