No.32 平成18年4月 発行

保護者、地域住民参画による学校改善

尾木 和英
東京女子体育大学名誉教授
言語教育文化研究所代表理事

●開かれた学校づくりの重要性

平成18年2月、中教審教育課程部会から教育内容等の改善方向が示された。こうした動きを踏まえ、各学校は新しい教育活動に取り組むことになるが、その際に開かれた学校づくりが重要な課題になる。
 ほんの7~8年前まで、開かれた学校というと、施設開放を中心に、比較的限定された範囲でとらえられていた。しかしこれからは、学校運営や教育活動など学校教育全般にわたって理解を求め、双方向の関係、密接な連携体制を確立することが必要になっている。例えば、子どもを巻き込む深刻な事件への対応を考えれば分かるように、学校単独での重要課題への対応は考えにくい状況になっているからである。
ある教員に聞いてみた。
 連携の重要性は次のようにとらえることができる。

  1. 子どもの教育に対する共通の願いを生かし、協働で確かな学力、豊かな人間性育成の教育を進める。
  2. 連携を通して子どもの生活・活動の場である家庭・地域の教育機能を充実させ相互補完を図る。
  3. 連携を生かし、子どもの社会参加やボランティア活動など協働の活動の機会を充実させる。

●自己点検評価と説明責任

開かれた学校に関連して、家庭・地域に対する説明責任ということが、これからの学校に強く求められるようになっていることに注意を払いたい。

平成17年10月の中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」では、学校の自主性確立のために権限と責任を持つこと、保護者・地域住民の参加と評価で透明性を高め、説明責任を果たすシステムを確立することが重要であると述べられている。これは今後の学校運営の基本姿勢を示すものといえよう。

これからの学校では学校の教育力、すなわち「学校力」を強化し、「教師力」を強化し、それを通じて子どもの「人間力」を豊かに育てることが重視されている。

どうも、評価される教員の側に問題があるという以前に、評定者の側にも問題があるように思えてならない。

「人間力」には、確かな学力、豊かな人間関係を築く力、自らの課題に粘り強く取り組み解決を図る力など多様な側面が含まれる。こうした力を育成するには、学校内に限定する教育活動だけでは限界がある。効果的な教育であるためには、説明責任を果たし、保護者・地域住民の参画を促す協働の体制を築くことが大切になる。

●連携をどう進めるか

家庭・地域との連携には次のような側面がある。

  1. 学校運営の改善・充実に機能する、地域に開かれた学校づくりの推進
  2. 効果的な教育課程の編成・実施による特色ある学校教育の展開
  3. 学校が当面する課題の解決や健全育成の展開

冒頭に述べたように、これからの学校は、「人間力」の育成をめざし様々な新しい実践を行うことになる。そこでは、校長がよりよい決定、よりよい運営をするためのサポートシステムを確立することが必要になる。しかし、学校は地域の人材情報や支援体制の組織については必ずしも十分な経験、情報を持っていない。学校に対し、地域の教育資源・人材や、連携に向けての効果的な実践に関する情報が提供され、支援策の講じられることが必要になっている。

●留意すべきことは何か

「確かな学力」形成の基盤となる言葉の力をどう育てるのか。体や心を育てる源となる体験を、どのように教育活動に位置付けるか。こうした課題に対して家庭・地域との連携体制を生かして教育活動を展開するにあたって、各学校は次の諸点に留意する必要がある。

  1. その重要性、新しい取組みの方法について、教職員の間で共通理解を図る。
  2. 連携・参画を実際にどう生かすか、経営方針との関係について検討を加える。
  3. 連携の内容・方法について、適切な評価と評価結果を生かした改善の仕組みを整える。
  4. 教育活動に関する自己点検・評価とそれに基づく説明を適正に行う校内体制を整える。

実態把握(地域の教育資源、人材バンクの整備)→校内指導体制の整備→PTA・地域関係機関等との連携→第三者評価を含む自己点検・評価→説明責任に関する取組み・協働での活動の企画、実践

今後は自校の実態把握に立ち、こうした流れを踏ま え、一歩一歩取組みを積み重ねるという姿勢を確立す ることが各学校の当面の課題になっている。


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