No.37 平成18年9月 発行

説明責任に機能する学校評価

尾木 和英
東京女子体育大学名誉教授
言語教育文化研究所代表理事

●説明責任をどうとらえるか

文部科学省が作成した『学校評価ガイドライン』(平成十八年三月)では、その目的として、1)教育活動その他の学校運営について具体的な目標を設定し、その達成状況、取組の適切さを検証して組織的・継続的に改善すること、2)自己評価、外部評価の実施とその説明・公表により、保護者・地域住民から信頼され開かれた学校づくりを進めること、が示されている。
 各学校においては、「生きる力」の育成を目指し、創意を生かした取組を展開している。目標の達成状況とその成果を評価し、保護者や地域に対して説明責任を果たすことが当面する課題になっている。
 信頼感の基礎は学校の教育活動に関する十分な理解にある。保護者や地域住民等の協力の姿勢は、学校の努力に対する共感的理解に基づいて築かれる。そこで問題になるのが、効果的な点検・評価をどう行い、どのような内容について説明をしていくかということである。

●何をどう説明するか

 説明の内容としては、次のようなことを盛り込むことが考えられる。

  1. 学校教育目標実現のための重点目標や特色ある教育活動の内容
  2. どのような点に留意して教育課程を編成し、学習指導をどう展開しようとしているか
  3. 子どもたちの学習状況及び学習指導上の課題と学力の実態
  4. 子どもたちの生徒指導上の課題と、学校で力を入れている生徒指導、心の教育の内容
  5. 子どもの自己実現にかかわる問題と進路指導、生き方指導の内容と特に力を入れている点
  6. 心と体の健康づくり、安全教育・事故防止計画と危機管理の内容

掲げた教育内容はどの程度実現し、課題になっているのは何か。これからの学校においては、透明性を高め、具体的にその内容を示すことが大切になっている。

情報の共有によって、協力と支援を得ることが学校運営の上で欠かせないものになっている。そして、その前提になるのが、外部評価を含む、全校体制で進める効果的な学校評価の実施である。

●まず目標と評価項目の設定

学校評価を行うためには、まず自校の教育活動等について中期の目標を設定して見通しを持つとともに、その年度の目標を具体的に立てることが大切である。最近、マニフェストを掲げ、これを一つの柱として学校評価を行う学校が多くなっている。
 この点に関して冒頭に紹介した「ガイドライン」では、「各学校は、学校の教育目標その他の学校運営について、中期と単年度の目標を具体的に設定する。その際、このガイドラインに示す項目や指標を参考にする」と述べられている。
 「ガイドライン」には次のような評価の項目例が示されている。

1)教育課程・学習指導、2)生徒指導、3)進路指導、4)安全管理、5)保健管理、6)特別支援教育、7)組織運営、8)研修、9)保護者、地域住民との連携、10)施設・設備。

さらに、紙面の関係でここでは省略したが、具体的な指標例も示されている。学校としては、自校の実態に基づき掲げる教育目標と評価の項目・指標とが密接に結びつく形で設定されるよう留意し、それが組織的な評価の実施、説明責任にかかわる取組に生きるよう工夫されることが必要になっている。

●求められる学校評価システムの確立

 「ガイドライン」では、学校評価の方法として、1)各学校が自ら行う評価及び学校運営の改善、2)評価委員会等の外部評価者が行う評価及び学校運営の改善、3)評価結果の説明・公表及び設置者等による支援や条件整備等の改善、があげられている。
 目標と同時に、重点となる内容を「子どもにつけたい**の力」といった形で具体的に示し、それを学校評価に結びつける実践、評価結果を次年度の目標設定・教育計画の立案、点検評価実施組織の改善に生かし、学校評価システムを整備して組織的・継続的に学校評価を行う取組などがすでに行われている。「ガイドライン」の内容を踏まえ、こうした先導的な実践の成果を生かす組織的な学校評価が、新しい学校教育を構築する上での課題になっている。