No.38 平成18年10月 発行
次の表は、2005年3月に発表された「高校生の友人関係と生活意識-日本、アメリカ、中国、韓国の4カ国比較-」の調査結果の一部である。この調査は、財団法人「日本青少年研究所」と「一ツ橋文芸教育振興会」が昨年秋に日米中韓の高校1~3年生あわせて約7200人を対象に実施したものである。
「どのようなタイプの生徒になりたいか」
という問いに対してそれぞれ4カ国の高校生は、次のように回答している。(単位は%)
勉強がよくできる生徒 | |||
---|---|---|---|
日本 40.5 |
米国 83.3 |
中国 79.5 |
韓国 67.4 |
リーダーシップが強い生徒 | |||
日本 15.7 |
米国 54.1 |
中国 53.0 |
韓国 48.7 |
クラスのみんなに好かれる生徒 | |||
日本 48.4 |
米国 21.6 |
中国 66.2 |
韓国 41.4 |
課されたことを確実にこなす生徒 | |||
日本 42.1 |
米国 60.3 |
中国 48.3 |
韓国 70.0 |
失敗を恐れず、未知に挑戦する生徒 | |||
日本 39.6 |
米国 50.1 |
中国 68.2 |
韓国 59.2 |
決まりに従い、ルールを守る生徒 | |||
日本 15.4 |
米国 26.3 |
中国 42.9 |
韓国 27.0 |
調査結果のほとんどの項目で他の国より低く、「リーダーシップが強い生徒になりたい」では、極端に低い。その他の「失敗を恐れず、未知に挑戦する」なども大きく開いており、「決まりに従い、ルールを守る」は、今もっとも勢いのある中国の1/3程度である。ただ一つ「クラスのみんなに好かれる生徒になりたい」では、米韓よりも高い数値である。
また、「勉強がよくできる生徒になりたい」では、米中の半分であり、勉強に対する関心も4カ国の中で、もっとも低い。その一方で、「クラスの人気者になりたい」と思っており、「勉強離れ」が浮き彫りになった。
「いい大学に入れるようにがんばりたいか」という別の質問項目でも「まったくそう思う」と回答した生徒は、中国がもっとも高く64.1%、韓国61.2%、米国30.2%、日本は最下位の25.8%である。
文部科学省が実施した「生徒指導上の諸問題の現状」の調査結果で、「公立小学校の児童が平成17年度に起こした校内暴力が2018件(前年度比6.8%増)と3年連続(3年前の14年度比では、61%増)で増加し、過去最多となった。大変な状況である。校内暴力の中で、もっとも多いのは児童間暴力の951件であるが、前年度比4.1%減である。しかし、もっとも恐ろしい対教師暴力は過去最多の461件である。前年度比38.1%増で急増している。先日、極端な例かもしれないが、次のようなことを聞いて驚いた。
「給食準備の時間に、ナプキンの敷いてある机の上を飛び跳ねる子どもがいて困っている」
小学生の学校生活が確実に乱れている。一体、小学生の意識はどうなっているのだろうか。
高校生の意識調査からは、「向上心」や「チャレンジ意識」「規範意識」が低下し、前向きな姿勢が弱くなっている。何となく冷めた気持ちで生きているように思える。一方、小学生の校内暴力からは、自己中心的な生活、「他者意識」の欠如や「規範意識」の低下が見てとれる。
このような状況になる原因はどこにあるのだろうか。
一言でまとめることは性急かもしれないが、「忍耐力の低下」にあるのではないか。その「忍耐力の低下」は、毎日の「生活習慣」からくるものではないだろうか。
今、全国で繰り広げられている「飲酒運転根絶」にも通じる。福岡市で起きた重大事故後に、全国で行われている一斉検問では毎日のように違反者が検挙されている。しかも、大変な人数である。「絶対にしてはいけないこと」を平気でやっているように思える。そして先日、とうとう教育委員会のトップまでもが飲酒運転で検挙されてしまった。
☆
学習指導要領の改訂作業が急ピッチで進められているという。そして、改訂に当たっては、「生活習慣」にも着目しているという。子どもの問題の背景には、「生活習慣」が大きくかかわっているのではないか。学力の問題も「生活習慣」と密接につながっているように思えてしかたがない。
家庭や地域の教育力が低下していると、他人事のような言い方ではなく、「今すぐ取り組むことは、生活習慣の見直しである」という目標を掲げ、国をあげて進めなければならない段階ではないか。もちろん、大人も含めてである。
今、国民運動として広がっている「早寝・早起き・朝ごはん」などは、まさに、「生活習慣」そのものである。「忍耐力」や「向上心」、「他者意識」や「規範意識」などは、教えて育つものではなく、毎日の生活習慣の積み重ねの中で育っていくものではないか。