No.53 平成19年12月 発行

「地域型」小・中一貫教育の願い-宮崎県日向市の取組よりそのⅡ-

宮副 正克
日向市教育委員会教育長

先般、国の教育再生会議において、検討する改革素案が明らかにされ、子どもの早熟化傾向をふまえ、学校教育法制度以来の小中学校の「6・3」制区分見直しを明記。9年制の義務教育学校(小中一貫校)の制度化案が挙げられたところでもある。今後の国の動向に強い関心と期待を寄せている。
 前回述べさせていただいたように、本市は、平成17年7月に内閣府から構造改革特区の認定を受け、教育特区として全市を対象とした小中一貫教育を年次的に推進している状況にある。また、新たな教育事情として他町との合併が、平成18年2月に施行され、広域化に対応する教育行政の組織再編が必要となった。これを機に、学校教育行政の特化を進め、専門職員等の配置拡充をはじめ、組織強化に努めている。

■地域に即した小中一貫教育の推進状況

本市は全市の小・中学校が教育特区の対象となっているところから、学校・地域の実態、地理的条件等に即し実情に合った形で、各地域の中学校を中心に併置型、併設型、連携型の類型により漸次整備充実の方向で進めている。

  • 併置型一貫教育校(平岩小中学校-平成18年4月開校)においては、教育特区の内容から想定される一貫教育にマッチした既存校舎(小学校)の改修と合わせて、その校舎に付設する形で中学校新校舎(耐震診断の結果から大改築の時期)を建築し、連動させることによって、財政面の負担軽減と教育活動の円滑化を図り、ことに、中学校新校舎内に小・中合同の職員室を設置することで、教職員の兼務発令等の措置と併せ意識改革の醸成を図る場となっている。
  • 併設型一貫教育校(大王谷小中学校‐平成20年4月開校、現在小中連携推進事業拠点校)においては、現在なお、大規模校として児童数が増加傾向にあり、それに伴う普通教室の増設が必要となってきている。この事態をふまえ、建設費の確保が極めて厳しい現状に鑑み、学校間に連絡通路(長さ約150m、巾2.5m‐「学びのかけ橋」と児童が命名)を敷設することによって、小学校の特別教室を普通教室に改修し、教室の確保に努める一方、中学校の特別教室を小学校と共有して活用している。教科担任制等の導入も含め、児童・生徒や教職員の学校間の移動を円滑かつ活発に行うことを考え、財政面と教育活動の両面から効率化に努めているところである。
  • 連携型一貫教育校においては、まさしく学校・地域の実態、地理的条件等に配慮する必要がある。現在、学校間の児童・生徒の教育活動よりも兼務発令による教員の交流授業が主流となっており、教員の移動時間や合同研修等の時間の確保と教育活動の活性化へ向けた創意工夫が課題となっている。英会話科の実施については、等しくネイティブスピーカーによる積極的な授業の展開と合わせ、教育研究所において、併置型、併設型、連携型に共通する、国語科、算数・数学科、道徳、ふるさと学、英会話科等のカリキュラム等の資料作成を進めており、それらを共有して活用することによって、地域差が生じない努力を続けている。

■英会話科に伴う小学生海外派遣研修事業の推進

今年から、本市にとって初めての小学生海外派遣研修事業を実施することとした。
 本市及び市教育委員会は、英会話科を進めるにあたって、宮崎国際大学と平成17年に協力協定を結び、環境整備を進めてきたところである。さらに、英会話実践的コミュニケーション能力の育成を図るうえからハワイ州教育委員会の協力を得て、米国教育省ElmentaryBlue Ribbon Schoolに選ばれたMomilani小学校と全市内小学校とが姉妹校となり、小学6年生を対象に、学校での授業参加(Vocabra Mathematics)やホームステイを実施したところである。
 モミラニ小学校の各教室には、場面ごとに具体的な行動一覧が示されており、Be Respectful(優)、Be Respectable(良)、Be Safe(可)の3つの基準を設け、子どもたちが自ら判断しどう行動すればよいか、目的意識をもって学校生活が送れるような自己評価の環境づくりがなされていた。学校文化の違いはあれ、印象に残った一つである。

これからも、今日の教育的課題に対処するため、小中一貫教育校の構築も年次的に類型に即し、しかも教育システムの本質を見極めながら、その推進にあたっては、教育の質において地域差の生じない対応が望まれる。ことに連携型については、児童・生徒の交流事業、学校行事の合同化、カリキュラムの共有化、ICシステムの活用、交通網の整備など、一体的な教育環境の醸成が実感できるまでの工夫と創意はこれからも続く。ことわざに言う「一寸延びれば尋ひろ延びる」の心境を信じてやまない。