No.55 平成20年1月 発行

学校改善の鍵握る学校評価

尾木 和英
東京女子体育大学名誉教授
言語教育文化研究所代表理事

■学校評価の必要性の再確認

「生きる力」を育てる学校づくりが、いよいよ本格的に展開し始めている。学校評価は、その学校改善の要に位置づくものということができよう。
 文部科学省が平成18年7月に作成した「学校評価」に関する資料では、学校評価の必要性は、(1)教育の質の保証・向上、(2)信頼される、開かれた学校づくり、(3)学校運営の改善、の視点からとらえられている。
 各学校の教育水準の向上のためには、教育活動その他の学校運営に関する効果的な評価が欠かせない。評価結果の説明・公表によって信頼される学校を現実のものとし、さらに評価結果の効果的な活用によって学校運営、教育活動の改善・充実を進める。その取組がそのまま新しい学校づくりに結びつく。
 しかしその効果的な取組が、すべての学校において順調に進められているわけではない。
 校務の多忙化などの理由から、学校によっては、新しい試み、大きな変革に対する教職員の消極的な態度が見られる場合もある。従来から行われてきた年度末評価に関し、あるいは外部評価の導入について、どこから改善に手をつけるか、とまどいを感じている場合もある。
 こうした学校の場合、まずは全教職員の間での基本的な事項への共通理解から取組を始め、自校の実態に立って、評価の取組にかかわるPDCAのシステムを校内に確立することを目指したい、というのが本稿の趣旨である。

■ 必要性に関する共通理解

まずは、すべての教職員の間で、学校評価の重要性、学校評価を行うことによって得られるメリット、効果的な実施のために必要な事柄など、次のことを中心に、十分な共通理解を図ることが求められる。

(1)学校評価の重要性の理解

平成14年施行の学校設置基準、平成19年公布の改正学校教育法の規定の趣旨、平成17年10月の中央教育審議会答申、平成19年1月の教育再生会議第一次報告、平成19年8月の「学校評価の推進に関する調査研究協力者会議」第一次報告などを資料として、なぜ学校評価が求められるかについて全員が確かに理解し、だから改善に取組む必要があるのだと認識することがまず大切である。

(2)学校評価実施のメリットの理解

学校評価を位置づけることによる教育活動の改善、教職員の意識改革、保護者や地域住民の学校への協力、教育委員会による支援の充実などのメリットが、すべての教職員に理解されることが大事である。

(3)効果的な実施に関する理解

学校評価を効果的なものとするために、どのような方法が求められるか、自校では何が必要になるかといったことについて、時間をかけて協議することが必要である。特に、授業を中心とする日常的な教育活動の評価とその活用についての理解が重要である。

■ 学校評価によるPDCAサイクルの確立

効果的な学校評価に関して、次のようなPDCAのサイクルを確立することが求められる。

(1)目標設定

自校の教育活動その他の学校運営について、全校および各担当の目指す目標を明確にする。総花的な目標を抽象的に示すのでは、成果と課題は把握しにくい。目標を重点化し、できるだけ具体的に示すようにしたい。

(2)教育活動等の実施

教育活動等の実践成果に関する情報・資料を日常的・組織的に収集、整理する。効果的な評価の一つの鍵は、日常の活動に関する資料の収集にある。改善を図るためには、日常的な評価活動を可能にする校内組織を確立することが大切になる。

(3)取組状況の評価

改善・充実のポイントは、a.効果的な取組状況の評価、b.評価結果のまとめ方の改善と評価結果の説明・公表の工夫、c.適切な外部評価の実施である。
 各学校の取組においては、評価結果の説明・公表という点で課題を残している場合が多い。効果的な外部評価の実施とともに、今後特に創意工夫を生かした実施が求められる。

(4)評価結果を生かした改善

評価結果に基づいて教育活動等の改善を行う。この段階においては、全校的な組織を生かし、きめ細かく評価結果をまとめ、評価結果を次年度の目標設定に反映させ、各担当としてはそれぞれの取組の改善に生かすことが重要になる。

各学校においては自校の状況に応じ、どこに重点を置いて改善を図るか、効果的な改善・充実のための組織を整え、着実な取組を進めることが求められている。