No.61 平成20年7月 発行

地域型小・中一貫教育の願い
-宮崎県日向市の取り組みよりその3-

宮副 正克
日向市教育委員会教育長

■地域に即した小中一貫教育の推進状況

小中一貫教育特区に基づき、平成18年4月に併置型一貫教育校として平岩小中学校(呼称名)が開校したのに続き、本年平成20年4月に併設型一貫教育校として大王谷小中学校(呼称名)が開校した。
 大王谷小中学校は、新興団地を有し、今なお児童数が増加傾向にあり、教室不足の解消から特別教室の小・中共有化や施設の有効利用、そのための児童生徒、教師等の円滑な移動施設として「学びのかけ橋(連絡通路)」の設置などハード・ソフトの両面から対応しているところである。本市の他校においては、中学校を中心に校区内の小学校間で連携型一貫教育校として、学校・地域の実情を踏まえ、可能な限り、地域格差の是正に対処し、教育の等質化に努めている。
 本年から、併置型、併設(一体)型と連携型においても、等しく全市的にいずれの学校にも兼務発令教員を配置し、小中学校間で一貫教育システムを実感できる環境整備を進めている。また、ALTの増員拡充を図り、すべての小中学校でネイティブスピーカーによる積極的な授業展開が実施可能となったところである。ことに、英会話科のテキストについては、英会話科アドバイザー、小中教員集団、関係機関、宮崎国際大学のスタッフ等による編集作業、監修の過程をへて「We Love Hyuga Vol1、2、3」を作成し、教員の活用研修と同時に、児童生徒が見て使って楽しく英会話の授業が進められる環境が徐々に整ってきているところである。
 また、教育研究所において、小中一貫教育校のどの類型でも共有して活用するためのカリキュラム、ステップアップ問題集の作成等を、算数・数学、国語、道徳、ふるさとの時間を共通テーマとして、研究開発を組織的に推進している。特に小5、6と中1との小中学校間の連続性・持続性を重視した内容に心がけている。
全市的に学校、地域の実情に即した状況で推進体制が整ってきたが、今後とも小中一貫教育の推進会議を定期的に開催し、実践結果の検証と課題改善に向け、対応策を講ずることとしている。

■ハワイ州モミラニ小学校との交流雑感

昨年から英会話科に伴う小学生海外派遣研修事業を実施した。米国教育省Elementary Blue Ribbon SchoolのMomilani小学校と姉妹校として協力協定を結び、児童間、教員間、学校間の交流が始まっている。英会話実践コミュニケーションの育成を通じ、ハワイ州の学校の事情や児童の姿の違いもいくつか見えてくるように感じている。

1 表現力の育成について

Momilani小学校においては、教科The Arts(美術)には、音楽・ドラマ(演劇)・人形劇なども含まれ、豊かな表現力の育成を重視している。指導に当たっては、地域の専門家やプロと契約を行ったり、ボランティアを募って保護者や地域の人材を活用している。
 また、児童は、人前で歌ったり踊ったりすることを恥ずかしがることもなく自然体で、一人一人が堂々と表現できる場面が多く見られた。準備された学習を選択する場面では、他人を気にせず積極的に一人で選び、てきぱきと参加するなど自立した行動が見られた。

2 放課後の児童の過ごし方について

学校の修学時間は短いため、他の学科(理科、社会、ハワイアナ、体育)の十分な履修が難しいようである。情操教育や全人教育といった範疇が気になる保護者は、放課後の稽古事で不足分を補っている状況にある。

3 保護者の関わり方について

日本の学校と比べて、ハワイでは保護者や地域のボランティアが学級に出入りする機会が大変多い。例えば遠足の付き添い、チューターと呼ばれる学習指導の補助、クリスマスパーティ、ランチタイムと休憩時間の子どもの監督など。
 一部ではあるが学校の実状の多様さを察しているところである。

■教育特区と国の動向

今日まで教育特区として進めてきている小中一貫教育については、「構造改革特別区域基本方針の一部変更について」(平成20年4月25日閣議決定)によって、内閣府より移管され、所管庁において全国展開の方向性も考えられる状況にあると思われる。
 また、英語教育についても、今回の学習指導要領の改訂では、小学校5年生から外国語活動が実施される状況にあるが、先般の教育再生懇談会においては、更に早期必修化が報告されている状況にもある。
 平成15年に、県、県教委主催の「インターナショナル・リーダーズ・セミナー」に参加した折、韓国ソウル市グーサン中学校、チョンサウォン施設の訪問を思い出す。国情によって教育に対する認識と英語教育などの修学の違いを実感し、今後の国の教育の動向に関心を寄せているところである。