臨時号No.65 平成20年9月 発行

「かかわり」から「つながり」へ

長南博昭
山形大学地域教育文化学部教授

■小学校の授業参観でつながった

今年の一月末に、文部科学省委託研究の調査で、鹿児島市内の小学校を訪れた。
 朝早くから、5年3組の社会、国語、体育、学級活動の各授業を参観した。自己紹介をしながら山形を紹介する時間もつくっていただくなど、元気で明るい子どもたちに囲まれて、小学校の先生気分を味わうことができた。すべてにわたって、学校や学級担任の心のこもった対応を受け、子どもたち一人ひとりの様子を詳しくみとることができた。
 大学に戻って礼状を書こうとしているところに、担任の先生から礼状が届いてしまい、すっかり先を越されてしまった。調査という一時的な「かかわり」を通り越してしまい、一気に「つながり」まで発展したような気分になった。
 急いで礼状を書いて出したところ、今度は、子どもたち全員からお手紙が届き、再び驚いてしまった。早々、山形の冬の様子などの写真を添えて返事を書いた。ところが、今度は、担任の先生が「山形の冬の暮らし」という授業をしてくれましたという子どもの手紙が届いた。

長南先生、お手紙や写真などを送っていただき本当にありがとうございました。長南先生が送ってくださった写真などは社会の勉強で先生が使ってくれたので、いま山形はこんな風なんだということが分かりました。写真では雪がすごくふっていた事が分かりました。それで知しきもおかげでふやすことができました。初めてきてくださった時も名産物の話などいろいろなことを話してくださいました。その知しきもまた社会での勉強に生かしつつ勉強にはげみ知しきをだんだんふやしていきたいです。長南先生とお会いしてからぼくはいろんな事を知ることができました。心からお礼を言いたいです。本当にありがとうございました。

■「つながり」を授業で実感させる

山形大学附属中学校の今年度の研究テーマは、「つながり」を実感する授業の創造である。
 研究で目指す《生徒像》は、次の二つである。

  • 授業で学んだことを「自分の学び」に反映できる生徒
  • 他とのつながりを通して、「自分の学び」を高めようとする生徒

そして、数学の授業では、研究のキーワードを「気づき、つなげ、広がる数学の世界」として、教科が目指す《生徒像》には、次の三つを掲げている。

  1. 学んでいる内容が、既習事項とどう関わり合い、どう発展していくかを意識しながら自分の学びを広げていくことができる生徒
  2. 自分の考えをしっかり持つとともに、自分の考えを伝え、仲間の考えにも耳を傾け、多様な見方・考え方に触れながら自分の考えを広げ、深めていくことができる生徒
  3. 身のまわりの事象の中に数学的な見方・考え方がいかされていることを知り、その有用性を実感するとともに、自らもさまざまな場面で広く活用していこうとする生徒

「つながり」を実感させる指導は、特にこれからの授業には不可欠の要素になるだろう。今学習していることが、将来の何につながっていくのか、他とのつながりで学習が深まっていくことなどを、子どもたちにしっかり伝えていくことが必要である。

■本物の「つながり」を教える

「スーパー大辞林」で調べると、次のような使い方を例示している。

○かかわり
「事件とは何の~もない」
「そのことには私も多少の~がある」
○つながり
「医学と生物学とは密接な~がある」
「親子の~」

いろいろなところで「かかわり」を重視しているが、「かかわり」で止まっており、「つながり」まで深化していない。最近起こったいろいろな事件や問題は、人と人、心と心がしっかりとつながっていれば、起こらないですんでいることである。
 「かかわり」と「つながり」は、あまり違いがないように思われる。しかし、大辞林の例示からも分かるように、「かかわり」は、一時的・表面的・形式的な関係であり、「薄っぺらな関係」である。だから、お互いの都合が合わなくなると、自分の勝手な都合で関係をやめてしまうことにもなる。「つながり」は、「密接なつながり」とか「親子のつながり」というように、簡単には切れない「厚い関係」を意味する言葉である。
 本物の「つながり」は、多様な人との相互交流を繰り返すことで形成されるが、毎日の授業の中で、「つながることの良さ」を教え、本当に人と人、心と心がつながる社会をつくる教育も重視しなければならない。

読者の皆様へ

教育情報をご愛読いただきありがとうございます。
本号はFAX送信の際に、編集部の不手際で表題が異なっていましたので、Web公開にあたり訂正させていただきました。
読者の皆様および関係各位に謹んでお詫び申し上げます。