本企画で扱う作品
作家紹介
佐伯 祐三(1898-1928)
大阪市に生まれ、東京美術学校(現在の東京藝術大学)で学ぶ。1924年から約2年間パリに滞在。一時帰国をはさみ、1927年8月に再びパリに渡るが、1年後に30歳の若さで病没した。パリの街並みや壁に貼られた広告を題材に、多くの油彩画を残した。
作品解説
カフェ・レストラン(1928年)

パリ郊外の村にあるホテルの食堂を描いた作品。中央のテーブルにはワインの瓶やグラス、皿、ナイフ、パンなどが並べられ、赤い服の人物と大きなフォークを持った人物が座っており、食事の途中のようだ。筆跡は荒々しく、人物や家具は大きくデフォルメされており、わずかな線で表現された人々の顔からは表情はうかがい知れない。
http://jmapps.ne.jp/osytrmds/det.html?data_id=810
ロシアの少女(1928年)

佐伯家に「モデルはいらないか」と訪ねてきた、ロシアの亡命貴族の娘を描く。赤や青、黄色などの原色を用いたあでやかな民族衣装を身にまとい、ややうつむいた姿勢の少女を、全体的に丸みを帯びた輪郭で表現する。明るい色調とは裏腹に、わずかな線で描きとられた少女の瞳は中空を見つめているように見え、寂しげな印象を与える。
http://jmapps.ne.jp/osytrmds/det.html?data_id=816
煉瓦焼(1928年)

煉瓦を焼く窯のある建物を描く。建物を真正面からとらえ、黒く太い線を用いてシンプルで明快な形を描きだしている。階段や煉瓦は縦横に引かれた線で示されるのみで、立体感は希薄である。左右のアーチ型の入口、中央のくぼんだ開口部が大きくゆがみ、建物に豊かな表情を付け加えている。空の青、煉瓦の赤、草の緑など、鮮やかな色彩がひときわ美しい作品。
http://jmapps.ne.jp/osytrmds/det.html?data_id=812
郵便配達夫(1928年)

ゆたかな白髭が印象的な郵便配達夫を全身像で描きだす。画面はほどんど直線で構成され、斜めに傾いた配達夫の体を支えるように、90度に曲げられた右足は太く力強い。顔の輪郭もまた直線的にデフォルメされ、目、鼻、口などのパーツは勢いのあるわずかな線で表現される。一方、トレードマークである白髭は絵具が塗り重ねられており、物質感が際立っている。
http://jmapps.ne.jp/osytrmds/det.html?data_id=815