本企画で扱う作品

展覧会「TRIO」展について

パリ、東京、大阪―それぞれ独自の文化を育んできた3都市の美術館のコレクションが集結。セーヌ川のほとりに建つパリ市立近代美術館、皇居にほど近い東京国立近代美術館、大阪市中心部に位置する大阪中之島美術館はいずれも、大都市の美術館として、豊かなモダンアートのコレクションを築いてきました。
この展覧会は、そんな3館のコレクションから共通点のある作品でトリオを組み、構成するという、これまでにないユニークな展示を試みます。 時代や流派、洋の東西を越えて、主題やモチーフ、色や形、素材、作品が生まれた背景など、自由な発想で組まれたトリオの共通点はさまざま。総勢110名の作家による、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など150点あまりの作品で34のトリオを組み、テーマやコンセプトに応じて7つの章に分けて紹介することで、20世紀初頭から現代までのモダンアートの新たな見方を提案し、その魅力を浮かびあがらせます。
※今回取り扱う作品はいずれも大阪中之島美術館に所蔵されている作品です。

作品解説

河合新蔵「道頓堀」1914年

道頓堀

【展示テーマ:都市と人々】
ちょうど110年前の道頓堀川を描いた作品。川端に立ち並ぶ特徴的な建物を背景に、2艘の船が川を行き交います。建物や人物が映り込んだ水面に、船が通った跡が筋を描き、揺らめきで生じたさざなみが点描風に描き出されています。建物を見てみると、ひさしや張り出し窓、洗濯物などが細かく描写されており、生活者の存在が感じられます。明治・大正期に活躍した河合新蔵は、水彩画の名手とうたわれ、克明な写実描写を得意としました。

アンドレ・ボーシャン「果物棚」1950年

果物棚

【展示テーマ:空想の庭】
川が流れる緑豊かな自然の中に、果物がぎっしりと並べられた棚が置かれています。棚の周りには様々な花が咲き誇り、虹のような色彩の蝶が飛びまわるこの世界は、さながら楽園のようです。ボーシャンは家業である園芸師の見習いをしていたため、植物には詳しかったのでしょう。正規の美術教育を受けることはなかったものの、素朴で味わいのある作風で評価を得ました。

マリー・ローランサン「プリンセス達」1928年

プリンセス達

【展示テーマ:美の女神たち】
4人の女性たちが犬とたわむれながら寄り添い、こちらに視線を向け微笑んでいます。柔らかな曲線と、パステルカラーを中心とした淡い色彩によって、優雅で幸せな世界が創り上げられています。ローランサンは、男性中心の20世紀初頭の美術界で、対等な芸術家として認められた数少ない女性画家のひとり。パリで舞台美術家や肖像画家として華々しく活躍していた時期の大作です。

ジャン・アルプ「植物のトルソ」1959年

植物のトルソ

【展示テーマ:生き物のかたち】
この彫刻は大理石でできており、紡錘形の真ん中ほどに丸みのある突起やくぼみが形作られています。滑らかな曲面による抽象的なフォルムは、女性の立像に見える一方で、芽吹いた植物にも見えます。アルプは抽象的な造形を追求しながらも、根底に常に有機的な生命の形態への関心を持ち続けました。「トルソ」とは人間の胴体のこと。植物と人体を組み合わせたタイトルもまた、成長や変容など、生命にまつわる様々な要素を想像させます。